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自動車業界トピックス

オートバックス、次世代車整備ネット構築 業界団体と連携へ

環境変化に対応、新経営計画で事業基盤強固に

オートバックスセブンは、次世代自動車に対応する整備ネットワークの構築をめざし、自動車整備業界団体との連携を進める。すでに一部団体へのアプローチに着手しており、今後も「積極果敢に進めていく」(小林喜夫巳社長)方針だ。同社はクルマを取り巻く環境変化に対応しネットワーク作りをめざす新たな経営計画を発表している。整備ネットワークもこの一環。業界団体のほか、整備専業者との連携も進め、次世代自動車のメンテナンスを担う工場網を構築する。(最終面に関連)

このほど開催した2019年3月期決算説明会で小林社長が明らかにした。小林社長は「ネットワーク作りは手間がかかる」との認識を示しながらも、一方で「私から声を掛けさせてもらっている団体もある。車体整備、整備事業者を含めて一緒にやろうとアプローチしていく」考えを示した。

分解、車体整備業を問わずに連携を進めていく(写真はイメージ)

同社は2017年に策定した中期経営計画を取り下げ、新たに策定した経営計画「5ヵ年ローリングプラン2019」の中で、六つのネットワークづくりを掲げている。「次世代技術に対する整備ネットワーク」の構築はこの一つ。自動ブレーキをはじめとする先進安全技術が適切に作動するためのメンテナンスを行うインフラを整える。この実現に向けては整備専業者との連携も強化する。後継者問題や次世代技術対応といった経営課題に直面する「地域の整備事業者」とアライアンスを組んで取り組む方針だ。
同社は業界団体、整備事業者を含めてネットワークづくりを進めるが、オートバックスの看板設置や社名変更など事業体制の変更は求めない。M&Aだけでなく資本関係を含まない提携関係も進める方針。「これから変わるクルマの(整備を担う)インフラを一緒に構築していきたい」考えだ。

新たな経営計画「5ヵ年ローリングプラン2019」を策定

オートバックスセブンは、2017年にスタートした中期経営計画に代わる新たな経営計画「5ヵ年ローリングプラン2019」を策定した。自動車産業が100年に一度の大変革期に直面する中、環境変化に対応したカーライフを提案する新たなネットワークづくりと基盤事業の見直しを進める。同プランは24年3月期を最終年度とするが、数値目標は絶えず変化する時流に合わせて1年ごとに見直す。結果的に前中計を取り下げることになったが、同社は今後、変化するクルマの利用シーンに合わせた商品、サービスを提供。使命とする「新しいカーライフ文化を創造し続けること」に向けてリスタートを切る。

同プランを策定したのは、「現状の計画では将来における継続的かつ安定的な成長を実現することは難しい」と判断したためだ。同社の主戦場であるカー用品業界は市場規模の縮小に加え、同業他社の競合だけでなく、ネット通販との競争も激しさを増している。少子高齢化や人口減少といった社会構造の変化、クルマに対する価値観やニーズの変化も、カー用品市場の大きな逆風となっている状況だ。
こうした環境変化に対応し、将来の持続的成長に向けた強固な事業基盤を作る推進役と位置づけるのが新プランである。プランの中ではクルマの利用シーンに合わせた商品、サービスを提供するため(1)オートバックスチェーンネットワーク(2)海外におけるアライアンスネットワーク(3)マルチディーラーネットワーク(4)最適なサービスを提供するピットのみのネットワーク(5)次世代技術に対応する整備ネットワーク(6)お客様とのリレーションを高めるオンラインネットワーク、という6つのネットワークを構築し、連携させていく計画だ。
(1)~(3)は既存事業の見直し、(4)~(6)が新規取り組み事項となる。(1)では既存店舗ネットワークの収益拡大に向けて施策を打っていく」(小林喜夫巳社長)方針。(2)では「海外のメーカー、仕入れ先と提携し、小売事業から卸売事業へのシフトを強化していく」計画だ。(3)では「国内外メーカーを問わず車販ディーラーの展開を進め、同時に、リースやシェアリングなども視野に入れていく」という。
(4)では店舗で販売した商品だけでなく「ネット通販の商品も含め、取り付けサービスを提供していく」考え。(5)では「先進安全技術が機能しているかどうかを確認するインフラを作り、顧客のカーライフを守っていく」とした上で、地域の整備事業者との連携を進める意向も示した。
(6)では「6つのネットワークを顧客目線でつなぐオンラインネットワークをイメージして作成に入った」という。リアル店舗とネットを結ぶプラットフォームの構築をめざす考えだ。

昨年11月にオープンした新コンセプトのフラッグシップ店舗「A PIT AUTOBACS SHINONOME」。多様化する顧客のライフスタイルに合わせたカー用品を提案する

ネットワークづくりと同時進行で進めるのが基盤事業の見直しだ。国内オートバックス事業における経営資源の最適化、連結対象の拡大を視野に入れた小売収益の拡大、実験業態の見直しと撤退、海外小売事業の縮小など事業基盤の整理も進める。

一連の施策を進める仕組み・制度として業務執行体制にもメスを入れる。現在12人いる取締役を監査等委員会設置会社への移行に伴い7人に削減するほか、6つのネットワークを所管する責任者の配置と積極的な投資も実施する計画だ。
同プランの最終年度は24年3月期だが、変化する事業環境に合わせて事業戦略と数値目標は毎年見直す。まずは20年3月期目標として、売上高2230億円、営業利益80億円、経常利益87億円、当期純利益58億円、ROE4・7%の達成をめざす。

※日刊自動車新聞2019年(令和元年)5月17日号より