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自動車業界トピックス

カスタマイズ業界 先進運転支援技術で温度差

特定整備への対応必須に センサー干渉防止 頭を悩ませる中小企業

緊急自動ブレーキをはじめとした先進運転支援技術に関連し、カスタマイズ業界の取り組みに大きな温度差が生じている。車両制御で重要なセンサーに干渉しないようエアロパーツのデザインを工夫したり、実証テストを厳格化するなど商品開発を強化するパーツメーカーがみられる。その一方で「カスタマイズは自己責任の世界」と話し積極的な対策を見送るショップがあった。(水町 友洋)

センサー干渉防止をデザインに織り込んだ「インパルセレナ」のフロントグリルカバー
「インパルセレナ」はリアハーフバンパーも形状を工夫

車高を極端に下げるなど改造状況によっては自動ブレーキが正しく作動しないケースも考えられる中、4月には特定整備制度が始まる。同制度では電子制御装置搭載車のフロントバンパー、グリル脱着についても新たな認証資格が必要となる。今後、クルマの付加価値を高める合法カスタマイズを提供し続けるためには、カスタマイズ業界でも特定整備への対応が必須となりそうだ。

デザインや形状を工夫してセンサー干渉を防ぐことに留意した―。日産車のカスタマイズパーツを手掛けるホシノインパル(星野一義代表、東京都世田谷区)は、日産の先進運転支援技術「プロパイロット」に対応した商品開発を進めている。

このほど開催された東京オートサロン2020に出展した「インパルセレナ」はスポーティなエアロパーツを装着しながらプロパイロットにも対応。とくにフロントグリルはカバーの設計を工夫してデザイン性を損なうことなく、センサーへの干渉を防ぐ形状を実現した。

担当者は「当社の商品はディーラールートで販売するケースが多い。だからこそ、先進運転支援技術に対応した商品開発が欠かせない」と話した。装着テストを繰り返し、機能に支障が出ないように仕上げたという。

車高調整式サスペンション(車高調)を開発・販売するテイン(市野諮社長、横浜市戸塚区)は、先進運転支援技術への対応を進めている。商品開発時のテストはもとより、取り扱い説明書の中でも商品使用時の注意喚起を徹底して行う。

それでも「車両技術が高度化するたびにチューニングはやりづらくなっている」(担当者)と本音を漏らした。また、ホシノインパルの担当者も「本当はグリルのエンブレムをインパルマークに変えたいが、元の『日産エンブレム』の中にミリ波レーダーが装着されているので交換できない。今後はフロントグリルのカスタマイズは難しくなる」と指摘した。

中小零細企業が多いカスタマイズショップでの対応は、さらに難しい。「センサー類は(付け替えたバンパーに)移植している。もし心配ならディーラーで再調整(エーミング)してもらえばいい。やってくれるところは少ないが…」と、先進技術搭載車のカスタマイズで頭を悩ませる。

さらに、対応を迫られるのが4月にスタートする特定整備だ。分解整備の範囲を拡大し、名称を変更した制度で、新設する「電子制御装置整備認証」はフロントバンパーやグリルの脱着作業も対象。例えば社外のエアロパーツを装着するため純正バンパーを脱着する作業にも、認証取得が求められるようになる。

国土交通省は4月に改正道路運送車両法を施行するが、認証取得の準備期間として4年間の経過措置を設ける。この間は新たな認証を取得しなくても、現在実施している作業に限り、継続して作業を可能にする枠組みを整えており、すぐに脱着作業ができなくなるわけではない。

それでも、カスタマイズ業界における特定整備、電子制御装置整備認証に対する認識は低いのが実情。近年、自動車メーカーや輸入車インポーターを含めて人気が高まっている合法カスタマイズを継続的に発展、活性化させるためにも、業界を挙げた周知徹底が求められそうだ。

※日刊自動車新聞2020年(令和2年)1月20日号より