経済産業省は、日本の新たな半導体戦略づくりに向けた本格的な議論に着手した。24日に初会合を開いた「半導体・デジタル産業戦略検討会議」で、骨子案を提示し、産学官で構成するメンバーで議論した。日本の弱みとなっている最先端の「ハイエンド」品だけでなく、自動車向けで広く使われる「ミドルエンド」の半導体も供給力不足にあるとの課題認識で一致。今後、海外大手半導体メーカーとの連携を含め、日本国内での生産能力の増強に取り組む方針も確認した。経産省では5月をめどに、半導体戦略を取りまとめる計画で、政府が今夏に策定する「成長戦略」への反映も目指す。

 第1回の同会議は半導体にテーマを絞って行った。半導体は昨年来、世界的に需要がひっ迫しており、自動車産業への打撃も広がりつつある。このため、メンバーに自動車分野からデンソーの加藤良文経営役員・CTOも加わり、議論に参加した。また、火災により生産が一時休止しているルネサスエレクトロニクスの柴田英利社長もオンラインで出席した。

日本の半導体産業はかつて、技術面やシェアにおいても世界をリードしていたが、長年低迷を続け、現在ではルネサスの自動車向け半導体が踏ん張っている状況となっている。いわば「一本足打法」に近くなっており、これが今回の火災や頻発する自然災害でリスクが顕在化する結果となった。梶山弘志経済産業相も「ルネサスやTSMC(台湾積体電路製造)の生産動向は、世界の製造業の稼働率に直結している」と危機感を示す。自動車をはじめとする国内産業の競争力を高めていくためにも、世界と戦える半導体を日本から生み出せる環境を早期に整えていく方針だ。

一方、デジタル化やグリーン化の流れは、日本を含め世界で加速している。より情報機器の高度化が求められる中で、高レベルな半導体は欠かせなくなる。自動車に限っても、自動運転化や電動化が加速する中で高性能な半導体のニーズが高まるのは間違いない。このため、先端半導体を手がける海外大手と連携してハイエンド品のサプライチェーンの確保にも取り組む。さらに、日本が強みを持つ半導体の製造設備や素材面での優位性も引き上げ、世界での主導権争いに加わっていく考えだ。