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自動車業界トピックス

統一ベア要求額の明示見送り

自動車メーカー各社の労組 一斉に要求提出    個社の実態に合わせて

自動車メーカー各社の労働組合は13日、経営側に一斉に要求書を提出し、2019年の自動車春闘が始まった。今年は自動車総連(髙倉明会長)が事実上のベースアップ(ベア)となる賃金改善の統一要求額の明示を5年ぶりに見送り、個社で実態に基づいた賃金水準を目指す方針とした。各社の要求をみると、トヨタ自動車がベアの具体額の公表を見送る一方で、日産自動車やホンダなどは3千円を要求し対応が分かれた。自動車各社は米中貿易摩擦などのリスクに加えて、次世代技術への投資を迫られている。各労組がどのような回答を得るか、中小労組の交渉にも影響するだけに注目が集まる。

2019年春闘要求内容

トヨタ労組は昨年の春闘で経営側がベアを公表しなかったことを受けて方針を転換した。非正規従業員を含む全組合員平均で1万2千円の月例賃金引き上げを求めた。ベア額は公表していない。これに対して日産やホンダ、三菱自動車など他の自動車メーカーは3千円のベアを要求した。
自動車総連では今年、ベアの統一要求額の設定を見送った。月額賃金総額の引き上げに重点を置くことで格差を是正したい考えがある。
一部業績を反映する一時金の要求額は12組合のうち、トヨタとホンダ、三菱自、スズキの4社が昨年要求を上回る額を設定した。これに対して米国事業の収益が悪化している日産や、品質問題で国内工場の操業にも影響が出たスバルが前年を下回る額を要求した。
自動車メーカー各社の19年3月期の業績見通しをみると、2大市場である米国や中国での販売の伸び悩みや、為替影響、自動運転やモビリティサービスなど将来への投資増加などが影響し、減益予想が相次いでいる。米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱などのリスクも多く、経営側は難しい判断が迫られそうだ。ただ、髙倉会長は「(従業員の)モチベーションが上がる結果でないと、この難局は乗り越えられないだろう」と、取り巻く環境が厳しいからこその人への投資の重要性を訴えた。
また日産は金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)などの罪で起訴されたカルロス・ゴーン前会長の意向により、これまで満額回答を得るケースが多かった。従業員のモチベーションアップを重視していたゴーン前会長が経営を離れてから初めての春闘となり注目が集まる。統一回答指定日は3月13日。

※日刊自動車新聞2019年(平成31年)2月14日号より