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自動車業界トピックス

設備や機器で細かい工夫

変化する自動車整備への提案 第36回オートサービスショー2019 ③生産性向上

整備業界が現在、最も憂慮している問題が人材不足だ。高齢化によるリタイアが増える一方で、整備士を志す若年層は減っており、特に地方では求人を出してもなかなか採用に結びつかない状況が続いている。厚生労働省によると、有効求人倍率(2018年12月末)が全職種で1.63倍だったのに対して、自動車整備業は4.29倍となり、前年の3.73倍からさらに上昇している。

整備白書(18年度版)によると、整備業に従事する全体の人数は4年連続で減少し39万9374人だった。しかし、実は整備士数は2年連続で微増し33万8438人となっている。これはディーラーが資格を持たない新卒者を採用し、働きながら二種養成施設を経て資格を取得させる動きが広がっているからとみられている。加えて、今年度から新たな在留資格「特定技能1号」での外国人人材の受け入れが始まっており、若手や外国人人材を“育成と同時に即戦力にする”必要性がより高まっていくだろう。その中で新技術に柔軟に対応し、かつ生産性を維持していくためにも業務における設備や機器など細かい工夫をしていかなければならず、日本自動車整備振興会連合会の竹林武一会長も「現在の人員で継続できるよう業務効率の改善や省力化機器の導入など生産性の向上を目指すことがまず必要だ」と積極的に取り組むように訴えている。

各社は運搬や手入力といった作業効率を下げる業務への負担を軽減する取り組みを推し進めており、相次ぎ実用化している

今回のオートサービスショーでも人手不足などの課題をふまえて省力化・業務効率化に寄与できるさまざまな商品やサービスが展示された。省力化においては安全自動車が共用機器や大型部品などを人手を使わず運ぶことができる「自動運搬台車」や、ストール内で天井のリールを車両の位置に合わせて自由に移動できる「自立式リール架台」を初めて展示した。「特許も出願中であり、業務のむだな動きを省くことができ、また大型車整備などの身体的負担も軽減できる」(担当者)と自信をみせる。また業務効率化という観点からは京都機械工具(KTC)が、車検作業などの測定結果をデジタル化できるアプリ「e―整備」を初公開した。同社が昨年に発表したIoT(モノのインターネット)化した「TRASAS(トレサス)」シリーズの工具を使用すればトルク値やタイヤの残溝、ブレーキパッドの残量などを手入力なしに登録できる。実測データは整備士の作業内容の見直しや、それらを印刷して顧客への提案にも活用できるため作業効率アップや技術力の向上にもつながるとみている。6月から提供を開始する予定だ。また今後は他の製品も含めて「多言語に対応するため開発を進めている」(担当者)と話しており、外国人人材の増加を見据えた対策も講じている。各種団体や学校などが整備業への誘致に取り組んでいるが、それと同時に目前の人材不足に対する対策も必要であり、これらの最新の機器が限られた人材の中での生産性向上にどのような効果をもたらしていくのかが注目される。

※日刊自動車新聞2019年(令和元年)5月23日号より