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〈ここに注目2019 自動車メーカーの事業戦略〉トヨタ、モビリティカンパニーへの一歩/日産、今後の経営体制の行方焦点

環境規制から技術革新、通商問題など、自動車メーカーを取り巻く環境は急速に変化している。その中で足元のビジネスから将来的な競争力向上も視野に入れた2019年の事業戦略は従来以上に活発化すると予想される。メーカー各社の取り組みにおける注目ポイントを考察した。

豊田章男社長が2018年1月、米国ラスベガスのCESで「トヨタを自動車会社からモビリティカンパニーへ変革する」と宣言してから1年。19年はその具体化へ、母国で一歩を踏み出す1年になる。移動サービス以外にも、電気自動車(EV)や自動運転技術の開発、トヨタグループ内の役割分担見直し、内外での新たな仲間づくりなど、多方面で動きが加速する見込み。事業面では、トヨタが本腰を入れると決めた矢先に、米中摩擦によって経済変調の兆しが出ている中国でどんな布石を打つかが注目点だ。

自動運転の技術開発を加速する(米国子会社TRIが公開した実験車)

国内のモビリティサービス展開では東京が先陣を切る。4月にトヨタ直営4販社が合流し「トヨタモビリティ東京」が発足予定。昨年4月には直営レンタカー、リース会社が合併して「トヨタモビリティサービス」が先発しており、この2社が軸となってカーシェアなど新モビリティサービスに打って出る。「所有から利用へ」の流れが全国一強い東京の動向は、全国の販売店が注視している。
乗り換え自由の定額サービス「KINTO」も近々、東京で始まる予定だ。

トヨタは中国を皮切りとする新型EV発売、自動車専用道での自動運転実用化、自動運転商用車「eパレット」実証などの照準を20年に合わせている。後者の二つは東京五輪・パラリンピックが舞台。19年の東京モーターショーはその前触れとなる。
トヨタ、デンソー、アイシン精機、豊田自動織機などのトヨタ軍団は、変革期に挑む最適な布陣を模索すると見られる。昨年はトヨタの電子部品部門をデンソーに移管することが決まった。競争力と全体最適が再編のキーワードだ。

 

日産自動車は、カルロス・ゴーン前会長の逮捕を受けて、仏ルノー、三菱自動車とのアライアンスを含めて、今後の経営体制の行方が最大の焦点となる。地域別では中国での拡販に注力するほか、米国事業の収益改善を進めていく。商品面では電気自動車(EV)をはじめとした電動車も積極的に展開していく。

EVのグローバルリーダーとして19年も積極投入していく(中国で発売した「シルフィ ゼロ・エミッション」)

逮捕を受けてゴーン氏の会長職を解任した日産は、筆頭株主であるルノーとの関係が悪化。ただ、ルノー側もゴーン氏が経営トップを辞任し、新体制をスタートさせた。これを受けて日産では4月に臨時株主総会の開催を検討するなど、新たな関係構築に向けた動きが本格化している。
両社では事業規模と資本構成の“ねじれ”が問題視されている。今後の交渉ではアライアンスや日産の人事に加えて、資本構成の見直しに踏み込むかどうかも焦点となる。日産は2018年12月に設置した外部の有識者などで組織する「ガバナンス改善特別委員会」が3月末までにまとめる提言を踏まえ、ルノー側との交渉を進める方針だ。
事業関連では、米国事業の収益性改善が大きな課題となる。米国でのシェア拡大路線を修正した日産は、17年後半から在庫整理を優先。セダン市場の低迷と合わせて大きな減益要因となっていた。その中で18年秋には主力車種の新型「アルティマ」を投入。19年は反転攻勢を強めていく。
今後の成長市場と位置づける中国事業にも注力する。19年から導入した環境規制に合わせてEVを積極的に投入するなど、EVのグローバルリーダーとして中国市場での存在感を高めていく。
国内ではシリーズハイブリッド車「eパワー」など電動車の販売を強化するとともに、軽自動車の新型車で販売増につなげていく。

※日刊自動車新聞2019年(平成31年)1月26日号より