道路運送車両法では、自動車メーカーが新車を1台ごとに陸運局の車検場に持ち込んで、ステアリングやブレーキなどが国の基準に適合しているかどうか新規検査を受ける必要が定められています。しかし、これでは手間がかかり、ユーザーに新車が届くまでの時間が遅くなるため、大量生産する自動車を対象に1951年に作られたのが「型式指定制度」です。

これは自動車メーカーが出荷前検査を代行できるようにする仕組みです。自動車メーカーがあらかじめ国に届け出した「型式」(エンジンや車体などの仕様や性能)に基づいて、保安基準に適合しているかどうかを出荷前に確認すれば、国による新規検査を受けた車両と見なされることになります。

 この出荷前検査は、車の品質を担保するためには必要不可欠な工程です。しかし、2017年以降、無資格者による検査や試験結果の書き換えといった不正が相次いで発覚し、日本のものづくりへの信頼を大きく揺るがしました。不正の背景には、過剰な業務量や検査員の人手不足、生産台数など目標数値必達への重圧があったようです。各社は不正の発覚後、意識改革や不正が起きないようにするための設備の導入を進め、再発防止に取り組んでいます。

一方、国土交通省も相次ぐ不正を引き金に、完成検査の方法を見直そうとしています。その一つが人工知能(AI)の活用です。現行法令では、検査は人が実施することとされているものの、足元では労働人口が減少しており、それが完成検査問題を引き起こす遠因にもなりました。人の代わりに自動化できる工程の精査と、自動化できない工程のAIによるサポートの2つを軸に検討を進めています。