車載電池は、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)など駆動力に電動モーターを用いる車両に必要な繰り返し充電が可能な二次電池です。電動車の航続距離を左右するキーデバイスの1つで、スマートフォンにも使われるリチウムイオン電池(LIB)が現在の主流となっています。LIBの実用化には原型を考案した功績でノーベル化学賞を受賞した旭化成の吉野彰氏など日本人研究者が大きく関わっています。

日本にはパナソニックや東芝などの電機メーカー系と、自動車メーカー系の電池メーカーが存在します。海外には最大手で中国の寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)、韓国のサムスンSDIやLG化学などがあり、アジア勢が世界で高いシェアを誇っています。

 世界の自動車メーカーが電動化シフトを鮮明にする中、車載電池を確保する動きも盛んになってきました。トヨタ自動車は調達先にメインのパナソニックに加え、ジーエス・ユアサコーポレーションやCATL、BYDなど5社を加えました。現在のグローバル化したサプライチェーンと同様に車載電池においても調達環境を整える狙いとみられます。

電動化の普及を見据え、生産能力の拡大とともに電池自体の技術革新も進められています。LIBにはリチウムをはじめコバルト、ニッケルなどのレアメタル(希少金属)が多く使用されています。レアメタルは採掘できる地域が限られていたり、埋蔵量が少なかったりと資源リスクがあるほか、コスト増加の要因になります。そのため、コバルトフリーなどの電池開発が模索されています。

また、電解質に固体を用いた全固体電池の開発も進められています。固体電解質を使用することで、可燃性で漏れると危険な電解液に比べて、電池の安全性を高めることが期待されています。トヨタなどが開発に取り組んでいます。そのほかにも電解質と電極を樹脂に置き換えるなど、すべてを樹脂材料で構成する全樹脂電池などが次世代車載電池として使われる可能性があります。