自動運転など最新技術の開発競争が加速する中、自動車メーカーや部品サプライヤーでは製品開発におけるコスト削減や納期短縮のため、シミュレーションツールの活用が進んでいます。シミュレーションツールは自動車の設計や解析などをコンピューター上で行うものです。

 自動運転車の開発では膨大な距離の試験走行が必要になります。さらに多くのセンサーを搭載するため、試験車両の製作にはコストがかかってしまいます。そこでシミュレーションツールを活用することで、試験車両がない開発の初期段階からさまざまな検証を繰り返し行うことが可能となります。加えて、コンピューター上で設計する際に変更した車両の性能をその場で解析・評価するリアルタイムシミュレーションにより、設計にかける時間を大幅に短縮することができます。

従来のシミュレーションツールは、自動車の骨格の設計をはじめとする構造解析がメインとなっていましたが、近年は流体や電磁界などその適用領域が拡大しています。

また、自動運転車では、車内の空間演出や乗り心地への対応が従来のクルマ以上に求められるようになります。シミュレーションツールでは、バーチャル空間で車内の光の当たり具合などを確認することができるほか、シートなどの質感も再現できることから、クルマ全体の開発にも影響を与えています。

こうした状況を踏まえ、ツールベンダー各社は、光学や音響などそれぞれの解析に特化した企業との提携や買収を行い、自社のプラットフォームへの組み込みを進めています。これにより、各解析機能が1つのプラットフォームに集約され、一度で多くの設計やシミュレーションができるようになりました。一度にシミュレーションできる範囲が拡大したことで、エンジニアにとっては利便性が向上しています。

今後は、AI(人工知能)を用いることで、より高い精度で最適化した自動車の設計が期待されています。自動車の技術革新に伴い、シミュレーション技術の進化も加速しています。