日本で新車を買う場合、自分の住む地域にある自動車メーカー系列のディーラーに足を運ぶのが一般的です。国内に自動車メーカーは12社あり、それぞれがブランド名を冠した販売店を全国各地で展開しています。地域の資本が経営する「地場ディーラー」とメーカー資本による「直営ディーラー」があり、こうした販売店が新車を販売し、車検や整備などアフターサービスを担っています。

2020年は国内の新車販売市場にとって歴史的な出来事がありました。それはトヨタ自動車による全店舗全車種販売への移行です。

 従来、トヨタブランドを扱う「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「ネッツ店」の4チャンネルには、それぞれ専売車がありました。例えばトヨタ店であれば「クラウン」、カローラ店であれば「カローラ」といった具合です。こうしたチャンネルごとに特色ある車種を独占的に販売することで、幅広い顧客層にトヨタ車を届け、登録車市場で半数近い高いシェアを維持してきました。

かつては日産自動車やホンダ、マツダ、三菱自動車なども同様に複数のチャンネル制を敷いていた時代があります。最後まで専売車制度を残していたトヨタでしたが、5月からはチャンネル名は維持しながらもトヨタブランドを扱う4チャンネル全店舗ですべての車種を販売しています。

今後は、店舗網の再編がどのように進むのか、関心が高まっています。人口減少などによって国内の新車市場は縮小していくとみられており、全国に約5千店あるトヨタ車の販売網の最適化は欠かせません。複数のチャンネルを経営してきた企業グループでは、法人を一本化する動きもあります。

MaaS(サービスとしてのモビリティ)やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の進展で自動車産業が大きく変わろうとする中、自動車販売店でも新たな役割を模索する動きが活発になっています。