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よくわかる自動車業界

21年CO2規制が引き金 欧州、電動車続々市場へ

 日産、電動車販売5倍へ ホンダ、25年までに全台数 アウディ、SUVを拡大

日産はeパワー採用のクロスオーバーコンセプト「IMQ」を公開した

【ジュネーブ=林里奈】自動車メーカー各社が欧州での電動車の販売拡大を急いでいる。独フォルクスワーゲン(VW)は電気自動車(EV)専用プラットフォーム「MEB」を中心に、グループ各社がEVの商品ラインアップを一気に拡大する。ホンダは2025年までに欧州で販売する全ての四輪車を電動車両へ置き換えることを発表した。欧州で強化される環境規制を見据えた取り組みが加速する。

アウディのQ4 e-tron

5日からプレスデーが開幕した「ジュネーブ国際自動車ショー」で各社が電動車戦略を相次いで打ち出した。VWグループ各社はMEBを採用したEVを発表した。アウディはMEBベースのコンパクトSUV「Q4 e―tronコンセプト」を世界初公開した。Q4 e─tronは2020年に生産を始める。航続距離は450キロメートル(WLTPモード)。19年発売のEV「e─tron」と合わせてSUVでの電動車ラインアップを広げる。 同じくVWグループのセアトもMEBを採用した初のEVを世界初公開した。VWのヘルベルト・ディースCEOはグループがEVラインアップを急拡大させている背景について、21年の規制強化を挙げる。欧州連合では自動車メーカーが販売する乗用車の1キロメートル当たりの平均CO2排出量を現行の130グラムから21年に95グラム以下にすることが義務付けられる。30年にはさらに規制が強化される見通しでEVの販売比率を「40~50%にしないと間に合わない」(ディースCEO)とみている。 MEBの活用によってVWグループは25年までにEVを50車種に拡大するほか、MEBをグループ外にも拡販してコストを下げる。 ホンダも欧州市場で電動車の販売比率をさらに高める。25年には欧州で販売する全ての四輪車をハイブリッド車(HV)、EVなどの電動車両に全て置き換える目標を発表した。これまで公表していた25年に同地域での電動車販売を3分の2にするという目標から、前倒しとなる。商品ラインアップはeコンセプトのほか、2モーターハイブリッドシステム「スポーツハイブリッドi―MMD」を軸に広げる。
各社によるEVの発表が続く一方、日産は独自のハイブリッド技術「eパワー」を採用したコンセプトカーを公開。EV「リーフ」だけではなく、eパワー搭載車と合わせて22年までに電動車両の販売を現状比約5倍にする考えを示した。三菱自動車は、PHEVのコンセプトカー「エンゲルベルク ツアラー」を発表。「Cセグメント以上の車両でEVのみで走行距離を確保しようと思うと、バッテリーを相当量積む必要があり価格が高くなる」(担当者)とし、得意のクロスオーバーSUVでは引き続きPHEVが中心になるとみている。

※日刊自動車新聞2019年(平成31年)3月7日号より

トヨタ、欧州にEV3車種投入、21年に電動車比率6割に

【ジュネーブ=林里奈】トヨタ自動車は、欧州で2021年までに電気自動車(EV)を3車種投入し、21年にはハイブリッド車(HV)などと合わせた電動車の販売比率を60%に引き上げる計画だ。欧州でディーゼル車離れが進む中、電動車のラインアップを広げて販売拡大につなげる。

トヨタ執行役員(トヨタ モーター ヨーロッパ社長兼CEO)のヨハン・ファンゼイル氏

トヨタのヨハン・ファンゼイル執行役員(トヨタ モーター ヨーロッパ社長兼最高経営責任者=CEO)が6日、日本メディアの取材に応じ明らかにした。「欧州ではHVへの期待が高まっている」(ファンゼイル執行役員)ことが追い風となり、18年のトヨタの電動車販売比率は48%に上昇。19年は50%を目標としているという。今後はさらにEVを21年までにトヨタとレクサスブランドで計3車種投入し、電動車比率を60%にまで引き上げる。トヨタはグローバルで20年代前半までにEVを10車種以上市販する方針を掲げている。 欧州事業を支える英国工場については、「英国のEUからの合意なき離脱によって、欧州域内向けの輸出に関税がかかることになれば、競争力は厳しくなる」と述べ、今後の投資計画に影響する可能性に言及した。英国生産車の大半は欧州連合(EU)域内向けに輸出している。世界貿易機関(WTO)のルールに基づき、EU域内向けの関税が現在のゼロから10%に上がれば、収益への影響は避けられない。
トヨタは英バーナストン工場にTNGA対応のラインを新設し、今年初めから新型「カローラ」を生産している。ファンゼイル執行役員は、英国がEUから合意なき離脱となった場合、23年頃に次期モデルの生産地域について検討を始める必要があるとの見通しを示した。

※日刊自動車新聞2019年(平成31年)3月8日号より