日刊自動車新聞社がサプライヤーを対象に行った採用活動調査によると、2021年度入社予定の内定者数(高校卒除く)が20年度の採用実績よりも増えた企業の割合が約2割にとどまった。新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化や先行き不透明感、コロナ禍による採用活動開始時期の遅れが影響したとみられる。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など次世代技術の開発で新たな人材の獲得が求められる中で、コロナ禍の影響で将来の技術開発に影響が及ぶ可能性もありそうだ。

調査は、9月中旬から10月初旬に実施した。内定者数に加えて、自由記述で「21年度入社の採用活動」、「コロナ禍での採用活動の展望」、「技術系の採用動向」の3点の設問を設定した。部品や素材メーカー100社以上にアンケートを展開して81社から回答を得た。

 

部品メーカーなど81社の2021年4月入社予定者(内定者)数(上段)と2020年4月入社数(下段)

21年度入社の採用活動は、今年3月に解禁し、6月に選考を開始した。新型コロナウイルスの感染防止の観点から、説明会や面接は対面方式ではなく、オンライン方式を活用する例年とは違った形式となった。「ウェブへの移行が遅れて、説明会から面接までに時間を要し、選考辞退が相次いで発生した」(中堅部品メーカー)と厳しさがあった一方で、「オンラインに切り替え、当初のスケジュールを大きく変えずに選考会を実施し、採用計画数の充足につながった」(日本精工)との意見もあった。

このほかにも、「説明会の参加人数が例年に比べ大幅に増加し、母数が増えた」(日本ピストンリング)や「これまで以上に幅広いエリアで採用活動することができた」(バンドー化学)、「来社形式では参加しなかった遠方の学生の参加もあった」(アルファ)など、オンライン方式が採用活動を充実させる「ツール」になったと評価する声も多かった。

技術系単体の内定者数は、20年度実績よりも増えたと回答した企業の割合が約3割で、全体的な傾向の2割を上回る水準だった。特に重視する分野は、「電気・電子系に重点」(愛三工業)や「自動運転でIT関連を強化」(小糸製作所)、「広い視点で理系全般から採用している」(オートリブ)など、次世代技術への対応強化を採用増の理由とする回答が多かった。また、ダイバーシティー(多様性)の観点で、「女性も積極的に採用する」(エイチワン)や「文理を問わず、女性や外国籍の採用にも取り組んでいる」(住友電気工業)との意見もあった。

技術系では、ソフトウエアや人工知能(AI)、セキュリティなどの「デジタル人材」を採用した企業は10社だった。採用の狙いとして、「IoT(モノのインターネット)やAIを取り入れた革新的なモノづくりを進める」(住友理工)ことなどが挙がった。採用活動では、「スカウトなどの手法を活用して強化している」(沖電気工業)として新卒採用に前向きな意見や、「AIの人材は中途採用もあり、新卒採用は少ない」(武蔵精密工業)と即戦力を求める意見もあった。自動車開発やものづくりの重点領域が、ソフトウエアや情報技術(IT)に移行する動きに対応している。