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自動車業界トピックス

「4月1日から特定整備~整備事業者の進む道~」(2)特定整備は商機か

ビジネス拡大や事業課題の解決 絶好のチャンスと捉えて

全国の工場で認証取得

ピンチというよりチャンスと捉えて対応したい―。オートバックスセブンで車検・サービス事業などを担当する倉林真也執行役員は4月1日に始まる特定整備制度をこう捉えている

。特定整備では先進運転支援技術のエーミング(校正作業)などを行うための新たな認証資格「電子制御装置整備認証」の取得が求められる。設備、敷地、人的要件を満たすことが必要になり、「本当に対応できるのか」と不安を抱える整備事業者も少なくない。その一方で、特定整備の導入をビジネス拡大や事業課題の解決につなげようとする動きもまた活発化している。

カトーは軽自動車から高級輸入車まで幅広い車種のエーミングに対応する

オートバックス(AB)は、新たな点検基準が施行される2021年9月までに、全国に約430拠点の指定整備工場で電子制御装置整備認証の取得を目指す。その他の約120拠点の認証工場についても順次取得を進めていく方針だ。

まずは、店舗で使う外部故障診断機(スキャンツール)と作業工程を統一化する。ABグループとしてエーミングに対する基本的な作業スキルと知識を共有することで、グループ全体として整備技術の高度化を進める。

また、19年5月に公表した新経営計画「5カ年ローリングプラン2019」で掲げた「次世代技術に対応する整備ネットワーク」の構築も進める。AB店舗のみならず近隣の整備事業者とともに特定整備にも対応した次世代整備網を整えるもの。昨年6月に滋賀県栗東市の正和自動車販売を子会社化したのはこの一環。4月1日には三重県津市の高森自動車整備工業も子会社化する。

「できない」を「できる」に

北関東を中心に自動車関連商品を販売するカトー(加藤伸一社長、栃木県宇都宮市)は、電子制御装置整備認証を速やかに取得することで、地元整備工場の事業支援を強化する考え。

同社は整備工場から作業依頼を引き受けるアウトソーシングに特化した認証工場「K―FACTORY(Kファクトリー)」を16年6月に設立。地域の整備工場の「できない」を「できる」に変えることをキーワードに、整備工場が設備や人員などを理由に対応できない作業を代行する工場として、内燃機やパーツの修理、予備車検、ブレーキライニングのリビルト、電装用品の取り付けなどを受託している。

エーミングについては昨年2月からサービス提供を開始。校正作業の前提となるホイールアライメントテスターも導入し、国産車のみならず、輸入車を含めて国内外の幅広い車両に対応するターゲットやスキャンツールを取りそろえる。

エーミングに当たってはメーカーの整備要領書を遵守した上で、2人1組の共同作業で実施。作業後のダブルチェックや作業証明書の発行も含め、作業品質の高いエーミングを提供する体制を構築している。

4月以降、Kファクトリーで電子制御装置整備認証の早期取得を目指す。地域の整備工場からエーミングを請け負うエーミングセンターとしての役割を果たすだけでなく、整備事業者が認証を取得する際のプロセスも指南したいと考えているからだ。

悪しき下請け体質の打破へ

営業支援室の大森敏弘マネージャーは「整備事業者の入庫状況やニーズなどを踏まえた最適なスキャンツールの提案なども含め、認証取得の準備から実作業までエーミングのすべてをアドバイスできるようにしていく」と意気込む。

事業者団体も特定整備への対応に奔走している。日本自動車ガラス販売施工事業協同組合(JAGU)の佐藤光男理事長は、「変化のチャンスだと捉えている。激変の時代を迎え、業界自体が良い方向へ変化していける機会だ」と断言する。

特定整備制度ではセンサー類などが装着されたフロントガラスの脱着も対象作業となるだけに、佐藤理事長が抱く危機感は強い。その一方で、特定整備がガラス修理業の下請け体質を打開する機会になるとも捉えている。

そのために「整備士資格(2級)の全社取得を目指し、さらに電子制御装置整備認証取得を促進することを決めた」(佐藤理事長)。

全国自動車電装品整備商工組合連合会(電整連)の紫関雅美会長は、「スキャンツールを仕事の一丁目一番地として扱ってきた20年の経験がようやく花開く」と満足げだ。「われわれは新しい役割を与えられた」と認識しており、今後、「講習会や各種研修をはじめサポート体制を整えていく」方針だ。

整備業界は「様子見の事業者が多い」と言われる。隣の様子を伺っているその間にも、先陣を切って特定整備に対応し商機を見い出そうする事業者がいるのもまた事実だ。

※日刊自動車新聞2020年(令和2年)3月12日号より