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自動車業界トピックス

連載「自動車整備の現在地 日整連の白書から」(中)整備業界の現状と見通し

少子高齢化や若者のクルマ離れ進み、人材獲得の厳しさ増す 特定整備制度でも事業場選り分け始まる

自動車整備の事業場数は、2015年度の9万2160事業場をピークに漸減している。20年度は、前年比0.1%減の9万1533事業場まで減少した。少子高齢化や若者を中心にクルマ離れが進み、事業場を維持するための人材獲得が年々厳しさを増している。また、20年4月にスタートした特定整備制度でも間接的な事業場のえり分けが始まっている。

分解整備事業者は電子制御装置整備への対応が求められている

20年度の業態別では、専・兼業は前年比0.1%減の7万1654事業場となり、5年連続で減少した。自動車整備白書は減少の理由を「経営者の高齢化や事業承継問題、人材難で廃業が増えた」と分析する。細かく見ると、専業が同0.2%増加し、兼業が同1.3%減少した。ただ、「コロナ禍で新車や保険の売上高が減少し、相対的に整備売上高の割合が増えて専業にカウントされた」という特殊な要因であり、事業継続の難しさから廃業を選択する傾向に変化はない。

他方、ディーラーは前年比0.2%減の1万6315事業場となり、3年ぶりに減少に転じた。「工場の統廃合による事業合理化がひと段落したものの減少した」(整備白書)と予想を覆す結果になった。

業界全体で採用難が課題になる中、人材確保の見通しはディーラーに軍配が上がる。日刊自動車新聞が3月下旬に全国の整備専門学校・自動車大学校を対象に実施したアンケートで、卒業生の進路は整備工場が平均6.7%だったのに対し、ディーラーが同74.3%と圧倒的な差が付いた。特殊要因で増減する兼業を除けば、5年前と比べて増加したのはディーラーのみとなる。

社会構造の変化に加え、特定整備制度も事業場数の増減に影響を与える。増加要素として新たにガラス交換やバンパーの脱着が対象となり、自動車ガラス修理事業者や板金塗装(BP)事業者が認証取得に動いていることだ。こうした事業者は電子制御装置整備への対応が喫緊の課題で、エーミング(機能調整)作業などの情報収集と認証取得を熱望している。

一方、日整連が実施した電子制御装置整備の認証取得に関するアンケートによると、20年6月末時点で分解整備事業者のうち認証未取得の8129事業場の8.9%が「取得しない」と回答した。理由(複数回答)は、「全部外注する」(45.9%)や「需要がない」(25.4%)が上位だった。10.8%は「廃業予定」と回答し、特定整備制度が分解事業者の進退に影響を与えている。自動車ガラス修理事業者やBP事業者すべてが前向きとは言えないが、分解事業者の方が作業場の確保などがしやすい環境にあるにも関わらず、諦めムードが広がっている。

もちろん、電子制御装置整備の認証取得に前向きな事業者の方が圧倒的に多い。ただ、現状は課題の先送り感が否めない。国土交通省がまとめた20年度の電子制御装置整備の認証数は、分解整備のみの「パターン1」から両方を行う「パターン3」への変更が7603件だった。認証工場数の約9万1500を踏まえると、導入1年目は低調な結果だった。

整備白書では20年6月末のアンケート調査の結果を「需要の増加に伴って、認証取得に舵を切る事業場も増える」と静観する。ただ、先進運転支援システム(ADAS)は高度化する一方で、普及したタイミングで取り掛かるのでは機を逃してしまう。次世代技術には対応しない事業場にはユーザーも新しい人材も足が向かなくなり、負のスパイラルに陥る可能性がある。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)4月27日号より