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わが社のES特集 – はじめに:顧客満足度向上は従業員満足度向上から

顧客満足度向上は従業員満足度向上から

誇りをもって働ける環境整備

CS(顧客満足)向上にはES(従業員満足)を高めることが不可欠―。自動車販売や整備の現場でES向上に向けた取り組みが加速している。「社員が会社に誇りをもって働ける環境がないと、お客様を満足させるサービスや提案はできない」(関東地区大手ディーラー社長)との考えから、新たな施策を取り入れる企業が増えている。その内容は待遇や働き方の見直しはもちろん、子育て支援や職場環境の改善など幅広い。少子高齢化が進み、国内市場はかつてのように成長が見込める状況ではない。それだけに顧客との“絆”をいかにしっかりしたものにしていくかが問われる時代となっている。社員が自社の待遇や環境に満足しているか否かで、顧客への人当たりも変わってくる。さらには採用が難しくなる中で、優秀な人材確保にもつながり、ES向上が企業の生き残りの上でも欠かせなくなっていることに間違いない。


優秀人材確保にも直結

顧客へのサービスにも意欲

自動車ディーラー各社は2000年代に入ってCS向上への取り組みを強化してきた。右肩上がりの時代が終わり、少子高齢化で市場の伸びは期待できない。新規顧客の開拓は難しくなり、新車販売に加え、既納ユーザーを中心とし自動車関連の幅広いサービスを提供していくことが収益確保に欠かせない状況となってきた。バリューチェーンの強化だ。

そのためには顧客に評価される接客やサービスの提案が重要となり、幅広い角度からCS向上に取り組んできた。丁寧な説明、居心地のよい店舗、キッズコーナーの設置などで子ども連れにも優しい空間づくり―その取り組みは評価され、バリューチェーンの収益比率も着実に高まってきた。

ただ、CSをもう一段高いレベルに引き上げていくには従来の延長線だけでは難しいのも事実であり、そこでESに目を向ける企業が増えている。「社員が自社の待遇や職場環境に満足すれば、顧客へのサービスや提案に意欲をもって取り組んでくれる」と期待する経営者は多い。見方を変えれば「自社への不満ばかりの人が、お客様を満足させようと本気で考えてくれるか疑問」ということにもなる。

近年、ES向上の機運が販売店や整備工場で高まってきているのも、企業・経営者サイドが社員一人ひとりの意識を大切にしようと改めて考え始めたからとも言える。また整備士をはじめ人材確保が難しくなつていることから、会社の魅力を高めて離職率を下げるとともに、新卒採用につなげたいとの意向もある。

地域や職場の風通しをよく

ES向上と一言でいってもその取り組みは多岐にわたる。待遇改善では、サービススタッフを中心に資格給や報奨金の充実などを打ち出す企業が多くなっている。ワークライフバランスも重視し、過度な残業を減らすなどの努力も見られる。

職場環境では整備工場で空調設備を整えるほか、省力化装置などを増やし作業者の負担軽減を図るなどハード面での改善が目立つ。ソフト面では、職場のコミュニケーションを深めるためのサポートを充実させている。運動会や地域でのボランティア活動などを通じて地域や職場内の“風通し”をよくするケースが増えている。

この他では、女性社員や子育て世代が働きやすい職場環境づくりに取り組む企業が多い。育児休業から復帰した社員の時短勤務を延長したり、託児所を設置するところも出てきている。産休、育休で退職せざるを得ない社員をできるだけ減らすのが目的で、今いる人材を大切にし活用していきたいと考える。

こうした取り組みが最終的には社員のモチベーションを高め、CS向上につながっていくと期待されている。さらには、採用の際に希望者にアピールできることになり人材確保にもつながる。少子高齢化が進み、市場、採用とも環境が厳しくなる中でESの重要性は今後さらに高まるものと見られる。