12月中旬にも決定する与党の2024年度税制改正大綱に向けて、自動車業界団体の要望活動が本格的に始まった。業界の総合団体である日本自動車会議所(内山田竹志会長)は、正式に取りまとめた要望書を与党自動車議員連盟の国会議員や経済産業省をはじめ関係3省などを訪問して説明・提出した。自動車関係諸税の負担軽減・簡素化を前提に税体系の抜本的見直しを求めるほか、電動化などに伴う税収減を理由とした新税創設や増税への反対姿勢を強調する。
CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaS(サービスとしてのモビリティ)など自動車産業の構造変革が進む中、半世紀以上にわたって続く自動車の税制度を抜本的に見直す好機と捉える。自動車の枠を超えた「モビリティ」の視点で幅広い議論を求めていく。
日本自動車会議所の「24年度税制改正などに関する要望書」では、与党・政府や関係省などに対する要望の大前提に「今後のモビリティ社会を見据えた税制のあり方を議論」することを据え、4つの重点要望項目と自動車関係予算に関係する要望を盛り込んだ。
脱炭素社会の実現のためには、税制の抜本的見直しが必要と主張する。加えて、モビリティ産業という新たな視点から、負担軽減・簡素化を前提とした新たな受益と負担の関係や税体系のあり方などについて議論を深めたい考えだ。
電動車の普及に伴う今後の課題では、税務当局が中心となって燃料税などの税収減と安定財源確保の必要性を主張している。要望書では「走行距離課税」や電気自動車(EV)などに対する「出力課税」の導入検討の議論は、財源確保前提の安易な増税や新税創設につながるとして反対を表明した。
車体課税の抜本見直しは、毎年の要望活動で継続して訴える重要事項だ。09年度に道路特定財源から一般財源化された自動車重量税は、課税根拠を喪失したとして将来的な廃止を求める。まずは、本則税率に上乗せされている「当分の間税率」の廃止を訴える。
自動車税・軽自動車税の「環境性能割」は、消費税との二重課税であるとして廃止を求める。直ちに廃止できない場合は、EVや燃費性能に優れた自動車を対象に優遇措置を拡充することを要望し、将来的には廃止するべきとする。
燃料課税の抜本見直しも、引き続き強く求める。ガソリン税、軽油取引税に上乗せされたままの「当分の間税率」の廃止と、ガソリン税・石油ガス税などの「Tax on Tax」(二重課税)は解消する必要があるとする。
このほかに、24年3月末で適用期限を迎える営業倉庫用建物などの税制を一定期間優遇する特例措置や、バリアフリー車両に対する特例措置の拡充・延長などの要望を盛り込んだ。クリーンエネルギー自動車(CEV)、商用電動車の導入促進に向けた補助金の拡充・延長や、充電インフラ設備の支援などに関する24年度予算の確保も要望した。
日本自動車会議所の佐藤康彦税制委員長(日本自動車販売協会連合会法規・税制委員会委員長)は、「負担軽減・簡素化を前提に、新たなモビリティ社会にふさわしい税制再構築のための議論を幅広く進め、その礎を築くことが極めて重要である」と述べ、与党・政府や関係省庁などの関係者に積極的な議論を呼び掛けた。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)10月24日号より