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自動車業界トピックス

エンジン部品メーカー、EV減速で事業戦略練り直し

HVやPHVが再び注目

エンジン部品の需要はどうなる?

軸受などのエンジン部品を手がけるサプライヤーが新たな投資機会をうかがう。エンジンブロックなどのアーレスティはインドで鍛造部品の生産能力を倍増させる。椿本チエインも既存部品の売り込みに力を入れる。ピストンリングのリケンNPRは水素対応のほか、約15億台にも及ぶ補修市場をにらむ。欧米で電気自動車(EV)販売が減速し、エンジンが載るハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)が注目され始めた。ただ、エンジンのピークアウト説も根強く、各社は地域や時間軸ごとの戦略を練り直す。

「あまりにも変化が激しいので、来年度は中期経営計画を始動せず、計画立案の年にする」。自動車エンジン用軸受で世界シェア首位の大同メタル工業。判治誠吾会長兼社長はこう語る。同社は、30年にエンジン用軸受などのモビリティ向け製品の売上高を7割、それ以外を3割とする長期ビジョンを持つが、EVシフトのペースが鈍化したことで「既存の軸受がもう少し伸びる可能性もある」(判治会長兼社長)とみる。

アーレスティの高橋新一社長は「供給地域によって事業ポートフォリオは変えていかないといけない」と話す。同社は中国でeアクスル部品の量産を始める一方、インドではエンジンブロック、変速機ケースなどの既存部品を含む鋳造部品の生産能力を25年度にも倍増させる計画だ。

欧米ではEVシフトのペースが昨年末から鈍化した。中国は別格だが、明電舎の井上晃夫社長は「たとえ中国であっても、新車全てをEVにというのは難しいのではないか」と予想する。椿本チエインの木村隆利社長も「揚子江(長江)より北は(EVシフトが)進んでおらず、一様に普及しているわけではない」と指摘し「タイミングチェーンでも開発テーマはまだあり、真摯に対応していく」と中国市場への投資に意欲を見せる。

ただ、時期はともかく、エンジンのピークアウト説は依然として根強い。パイオラックスの島津幸彦社長は「(完成車メーカーの)内燃機関の開発は最終フェーズに入っている。おそらく(次に投入されるのが)最後の製品になるだろう。この受注はなんとしても確保し、EV向けの投資へつなげていきたい」と話す。

ボルグワーナー・モールスシステムズ・ジャパンの三島邦彦社長は「われわれは、ラストワンスタンディング(最後まで残る人)になる」と表明する。エンジン部品の需要がある時期を境に消失するわけではない。エンジン用弁ばねなどを手がけるニッパツの茅本隆司社長は「需要が漸減する中でどう供給を続けていくかが課題だ」と指摘する。

エンジンが載るHVとPHV、そしてEV―これらのパワートレインがどの国・地域でどのように増えるか。エンジン部品メーカー首脳は「北米で生産拠点の統合も検討しているが、(反EVの)トランプ政権になれば残しておかないといけないし…」と悩ましげだ。各社は電動車部品への投資を増やしつつ、稼ぎ頭であるエンジン部品の事業戦略を注意深く練っている。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)2月16日号より