ソニーグループは電気自動車(EV)市場への参入を検討すると発表した。今春に新会社「ソニーモビリティ」を設立して、事業化の準備に入る。グループが手がけるセンサーや人工知能(AI)、ロボティクス技術を活用してソニーの特徴を生かした量産型EVの開発を目指す。EV市場は欧州や中国で拡大し、既存の自動車メーカー各社もEVシフトを本格化している。中国では低価格EVの販売が好調に推移して存在感を高め、異業種やスタートアップ企業のEV市場参入も相次いでいる。EVの普及で自動車市場が激変する可能性がある。
「EV市場参入を本格的に検討していく」―。ソニーグループの吉田憲一郎CEOは5日、米国ラスベガスで開催中のテクノロジー見本市「CES2022」の記者発表で、EV市場参入を宣言すると会場からどよめきと拍手が起こった。EV事業を推進する新会社ソニーモビリティを今春に立ち上げ、「AIとロボティクス技術を最大限に活用し、モビリティを再定義する」(吉田CEO)方針を示した。
同社は2年前のCES2020に、EV試作車「ビジョン―Sプロトタイプ」(ビジョン―S 01)を公開した。車両製造はオーストリアのマグナシュタイヤーが担い、ボッシュやコンチネンタル、ヴァレオ、ブレンボ、エヌビディアなど多くのサプライヤーがパートナーとしてプロジェクトに参加している。当時、ソニーグループでは自動運転車向けセンサーなどの研究開発が目的で、EV参入を否定していた。
脱炭素化社会の実現に向けた機運の高まりもあって環境対応車が注目される中、EVへの関心が世界的に高まっている。既存の自動車メーカー大手は相次いでEVのラインアップ拡充を打ち出し、内燃機関車からの撤退を打ち出した自動車メーカーも相次いでいる。
EV市場の拡大が見込まれる中、ソニーグループが抱えるセンサー技術やAI、エンターテインメントなどの技術を活用することで、強みを生かしたEVを開発できると判断した。開発するEVはクラウドに接続し、5G(第5世代移動通信システム)を使って新しいコンテンツを車内で提供する。
今回のCES2022にはSUVタイプの新たなコンセプトモデル「ビジョン―S 02」も公開した。画像処理半導体を含む40のセンサーを搭載して高い安全性を確保するとともに、01と共通のEV・クラウドプラットフォームを採用、広い室内によるエンターテインメント空間と7人乗りを実現している。
EVには電子機器の受託製造サービス大手の台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)が22年に市場参入するほか、米国などでスタートアップ企業も相次いでいる。さらにアップルもEV市場への参入が噂されている。ソニーグループも含めてIT分野で実績のある企業が手がけるEVは、既存の自動車メーカーにとっては脅威となる。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)1月6日号より