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自動車業界トピックス

ダンプでも広がるEV化、架装メーカーなどで開発進む

課題は積載量とコスト

新明和工業が売り出したEVダンプ

架装メーカーなどが電動ダンプ(EVダンプ)の開発を進めている。新明和工業はこのほど販売を始め、日立建機も鉱山で実証に入る。ダンプは地場系と呼ばれ、トラックほど都市間などの長距離を走らないが、コストを下げたり、積載量をいかに確保するかが課題だ。各社は脱炭素やSDGs(持続可能な開発目標)の潮流を背景に開発を進める。

新明和工業は、三菱ふそうトラック・バスの「eキャンター」をベースに、ダンプ装置を架装したEVダンプを発売した。走行はもちろん、荷台の上げ下げも電動化し、低騒音で二酸化炭素(CO)を排出しないゼロエミッション作業を可能にした。まず2024年度中に5台を売る計画だ。

同社はまた、商用電気自動車(EV)メーカーのHWエレクトロ(蕭偉城=ショウ・ウェイチェン社長、東京都江東区)と組み、HWエレクトロの多用途EV「ELEMO(エレ

日立建機は鉱山で実証走行に入る

モ)」のダンプ仕様車を開発して売り出した。HWエレクトロ初のダンプ車になる。自治体が持つ清掃車などへの採用を目指す。

日立建機もフル電動ダンプトラックの試験車をこのほど開発した。同社の常陸那珂臨港工場(茨城県ひたちなか市)から鉱山会社「ファースト・クォンタム」がザンビアに持つカンサンシ銅・金鉱山に向けて出荷する。今年半ばにも実際の作業環境下で基本性能や使い勝手、バッテリー充放電サイクルなどを検証する。

日立建機は「鉱山業界では、温室効果ガスの排出を削減する取り組みの一つとして、鉱山機械の電動化に関心が高まっている」と説明する。特に、鉱山現場で24時間走るダンプトラックの電動化に対する要望は高く、同社は、21年6月から重電大手、ABBと共同でフル電動ダンプトラックの開発に着手した。EVは自動運転など緻密(ちみつ)な制御との親和性も高く、脱炭素化に加え省人化のニーズも満たしやすい。

コストや航続距離、積載量の確保といったEV共通の課題はあるが、鉱山や建設現場でも大手を中心に脱炭素への対応は待ったなしだ。各社は将来をにらみ、EVダンプの開発や普及に挑む。

(梅田 大希)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月23日号より