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自動車業界トピックス

ホンダ、「オデッセイ」など販売終了 収益性向上へ採算重視 

ブランド力低下の懸念も

ホンダが国内四輪事業の収益性向上に向けた取り組みを本格化している。2019年5月に「シビック」などのグローバル車の派生数を25年までに3分の1に減らす計画を策定していたが、国内市場向けにフラッグシップの「レジェンド」、燃料電池車の「クラリティ」、「オデッセイ」の販売終了を決めた。いずれも販売台数は低迷しているものの、ホンダブランドを象徴するモデルだ。採算重視を鮮明に打ち出すホンダだが、国内市場での存在感が薄れることを危惧する声も広がる。

ホンダがレジェンドなど、3モデルの国内販売を終了するのは埼玉製作所・狭山工場の操業を停止するためだ。ホンダは12年に世界販売600万台を打ち出して世界各地で生産能力を増強してきたものの、販売が伸びずに計画を白紙撤回、その後は余剰となっている生産能力の削減を進めてきた。狭山工場の閉鎖もこの一環で、生産機種の移管や販売が低迷しているモデルの生産打ち切りを進めてきた。

ホンダ 主な国内生産車種の変遷

20年度以降、多くのモデルが生産を終了しており、21年度末までに生産を終了する車種数は今回の3車種を含め8車種に上る。生産能力が25万台の狭山工場の閉鎖で、ホンダの国内の生産能力は約80万台となる。国内販売台数から見て稼働率は約9割近くとなり、収益性が高まる見通しだ。

今後の焦点は稼働率9割の前提条件でもある国内販売70万台で維持できるかだ。ホンダは採算を確保できるモデルにラインアップを絞り込み、国内四輪事業の収益力アップを狙う。ただ、軽の「N―BOX」や小型ミニバン「フリード」、4月に発売した「ヴェゼル」は一定の台数を販売しているものの、「フィット」が納車遅れの影響もあって伸び悩んでおり、21年度の国内販売は70万台に届かない見通し。さらに22年以降、レジェンドなどの販売が終了することについて系列販売会社のトップは「ホンダを象徴するモデルが減ることでブランド力が下がれば、70万台のハードルはより高くなる」と述べる。ホンダの国内販売の売れ筋が利益率の低い軽自動車や小型車に集中している点も懸念材料だ。

20年度の国内販売台数ではミニバン「オデッセイ」や「CR―V」がそれぞれ競合するトヨタ自動車「アルファード」、「RAV4」の10分の1程度の水準だった。ホンダ系サプライヤーの首脳は「売れないモデルの生産を打ち切るのは当然かもしれないが、日本で売れる大きなモデルがないので国内向けは単価が安くて稼げない」と嘆く。

ホンダの前期の四輪事業の営業利益率は1.0%と、ライバルと比べても極端に低く、ここ数年の最大の経営課題となっている。生産能力の削減や不採算モデルの販売打ち切りなどで収益率改善を急ぐものの、ブランド力低下による販売影響という悪循環に陥るリスクも拭えない。四輪事業の採算性向上は、今回、生産打ち切りが決まった、90年代のホンダの経営危機を救ったオデッセイのような収益率の高いヒット車を市場投入できるかにかかっている。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)6月17日号より