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自動車業界トピックス

メーカー系整備学校、教員確保に新たなアプローチ 外国人や新卒者も教育者へ

多様な人材育成を自校の魅力に

全国の整備専門学校で教員が不足する傾向にある中、自動車メーカーの直営校では新たなアプローチで教員確保に取り組んでいる。ホンダ学園(高倉記行理事長、埼玉県ふじみ野市)は、系列校で学んだ外国人留学生を教員として受け入れ始めた。トヨタ東京自動車大学校(上田博之校長、東京都八王子市)でも卒業生を対象に、新卒での定期採用を行っている。これまでは現場経験がある整備士が教員の候補だった。外国人や新卒者に間口を広げ、多様な人材の育成に取り組むことで自校の魅力を引き上げ、入学者の拡大につなげる。

学生の多様化が進む中、丁寧に見守る教員は欠かせない

ホンダ学園では2021年度、ホンダテクニカルカレッジ関西(五月女浩校長、大阪府大阪狭山市)において、ベトナム出身の卒業生を新卒で教員に採用した。同校では在学生の約3分の1を留学生が占めている。このうち9割ほどがベトナムから来日している。母国語を操る教員が在籍していることで、授業でも留学生との円滑なコミュニケーションに役立っている。加えて、言葉や生活習慣が異なる環境に置かれる留学生と身近に接することで、ストレスや負担の軽減にも効果を上げている。故郷で暮らす家族との連絡の手助けも行っているという。

新卒者の受け入れも、教員採用の有効な手段となる可能性が高い。トヨタ東京自大は現在、おおむね年1人程度のペースで自校の卒業生を新卒で採用している。日産・自動車大学校(本廣好枝学長)も現時点で少数ではあるものの、新卒者の確保に乗り出している。教員の成り手は、一定の現場経験を持つ整備士が中心。このため、教員確保は中途採用が軸となってきた。新卒者は経験が少ない分、中途者と比べて教員としての育成にも多少の時間がかかると思われる。ただ、教員の若返りにつながる効果も期待できる。学生らと近い世代でもあり、コミュニケーションを深められそうだ。

また、研究開発系の学科を持つホンダ学園の各校は、ホンダで四輪車などの開発を担った人材も教員として採用している。車両の電動化が加速する中、最新の技術に接している人材を増やすことで、新たな技術やシステムに強い整備教育の実現を目指す。

メーカー系列校ではさまざまな工夫を凝らして、教員の層の充実に力を入れる。多様な人材を受け入れることにより、「他の教員にとって、良い刺激になる」(トヨタ東京自大の上田校長)と、指導水準の底上げにもつながるとみられる。

日刊自動車新聞社のアンケート調査では、5割以上の整備学校で教員が不足していると訴えている。比較的人員に余裕があるメーカー系列校でも採用は厳しくなりつつあり、「毎年度末には何とか必要な人数を確保できている」(日産自大の本廣学長)状況だ。

(諸岡 俊彦)

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)6月5日号より