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自動車業界トピックス

中古車輸出が拡大、年130万台超えも射程

国内向けと車両争奪戦が過熱

中古車輸出台数が右肩上がりで拡大している。2021年9月実績は、前年同月比8.3%増の10万5240台となり、同月として4年ぶりに10万台を上回った。一時はコロナ禍による海外のロックダウンや自動車運搬船・コンテナの不足で低迷したが、足元ではコロナ禍前の2019年実績を上回る水準に回復している。自動車専用船などを中古車輸出に振り向ける動きも出ており、このままのペースが続けば、3年ぶりとなる年130万台も視野に入った。

 新型コロナウイルスまん延の影響で世界的には通常の生活が取り戻せていない中、日本の中古車への需要は堅調だ。日本中古車輸出業協同組合(佐藤博理事長)の調べによると、21年1~9月累計の中古車輸出台数(車両価格20万円以上)は92万639台で、コロナ禍の影響がない19年と比べても3.0%のマイナスにとどめている。

一時は、世界的な物流需要の回復で中古車を運搬する貨物船やコンテナが確保しにくい状況が続いたが、新車の減産で自動車専用船に空きが生じ、その分が中古車に振り向けられ始めた。単月の輸出台数をみると、8月から19年比でプラスに転じており、「コロナ禍影響はすでにない」(佐藤理事長)状況だ。

現在のペースでいけば21年の中古車輸出台数は、2年ぶりの120万台超がほぼ確実で、120万台の半ばから後半となる見込みだ。今後も「日本の中古車の需要はおう盛な状況がつづく」(自動車流通市場研究所の中尾聡理事長)とみられ、輸送環境などの改善がさらに進めば大きく上振れする可能性もある。

ただ、今後、輸出事業者を悩ませそうなのが、車両の調達だ。新車供給の停滞で下取り車の発生が減少しており、中古車オークション(AA)の取引価格が高騰している。9、10月と新車販売台数が前年同月比3割減となる中、新車ディーラーも中古車小売りを強化するため、卸売りを以前よりも控える動きが加速。流通量はさらに減っていく見通しで、中古車争奪戦の過熱に拍車がかかりそうだ。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)11月4日号より