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自動車業界トピックス

中小企業庁、「労務費」価格転嫁の取り組みを強化

受発注双方の意識改革へ

中小企業庁は、労務費上昇分を企業間の取引価格に反映させる取り組みを強化する。「価格交渉促進月間」の終了後、労務費の価格転嫁を重点的に調べて公表する。「発注側から労務費に関する交渉があったか」などを受注側に問い、交渉実態や価格転嫁の度合いを業種別に調べる。自動車産業では労務費の上昇分を自助努力で吸収することが多い。中企庁は調査結果の公表を通じ、発注側、受注側双方の意識改革を促す。

労務費上昇分の価格転嫁が遅れている

価格交渉促進月間は毎年3、9月の2回に分けて実施している。終了後は自動車関連業を含む中小企業に対し、価格転嫁の交渉や状況に関するアンケート調査を行い、結果を公表している。

これまでは「原材料費」「エネルギー費」など他のコスト要素と同列で労務費の転嫁率を調査していた。ただ、転嫁が進みつつある原材料費などと比べ「自動車産業では労務費は『自社内で効率化するべき』という意識が根強く、転嫁があまり進んでいない」(中企庁事業環境部取引課の川森敬太課長補佐)という。昨秋の調査でも、原材料費の転嫁率が45.4%だったのに対し、労務費は36.7%にとどまった。

公正取引委員会は「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を昨年11月に公表。発注者が取るべき行動として、発注側から転嫁に関する協議の場を設けることや、経営トップに労務費の価格転嫁で主体的な取り組みを求めることなどを盛り込んだ。今回の調査では、発注側がこの指針に沿った対応をしているかを受注側に聴取し、労務費の価格転嫁の状況を〝見える化〟する。

中企庁は調査結果を踏まえ、受注側企業の価格転嫁率を公表している。昨年8月末に公表した結果では、いすゞ自動車や三菱ふそうトラック・バス、日立アステモ、豊田自動織機などが「価格転嫁」の項目で4段階中、下から2番目の評価だった。今後は、労務費の転嫁状況を個別に公表する可能性もある。

「賃金と物価の好循環」を目指すうえで、企業全体の9割以上を占める中小企業の賃上げが焦点となる。中企庁としては、適切な労務費の転嫁を目指し、大企業を中心とする発注企業に対し、より踏み込んだ対応を求めていく考えだ。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)3月7日号より