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自動車業界トピックス

事業用トラックにデジタコ 国交省が検討会

普及促進へ具体策

国土交通省は、事業用トラック(緑ナンバー)にデジタル式運行記録計(デジタルタコグラフ=デジタコ)の装着を促す。すでに装着が義務づけられている車両の7割がデジタル式だが、残りの車両は投資余力や必要性の低さなどを理由にいまだアナログ式だ。国交省は、アナログ式にはない長所を持つデジタコが生産性や安全性の向上に役立つとみており、検討会を立ち上げて普及策を練る。

デジタコにはアナログ式にはない利点がある

政府が「物流革新に向けた政策パッケージ」の中で、デジタコについて「将来的な義務づけも視野に入れつつ強力な普及促進を図る」と明記したことを踏まえ、国交省は「物流革新に向けたデジタル式運行記録計の普及促進に関する検討会」の初会合を2月28日に省内で開いた。ただ、今回の検討会では、デジタコの装着義務化や装着対象車両の拡大などの議論は予定していないという。今夏にデジタコの普及目標と具体策をまとめる。

貨物自動車運送事業法に基づき、車両総重量(GVW)7㌧以上または最大積載量4㌧以上の事業用トラックなどには運行記録計(タコグラフ)の装着が義務づけられている。今はアナログ式、デジタル式のどちらを装着しても問題はない。タコグラフにより法定3要素である「瞬間速度」「運行距離」「運行時間」を記録し、1年間保存する必要がある。

検討会ではまず、デジタコによる運送事業者のメリットを改めて整理する。具体的には、法定3要素に加え「動態管理」「配送管理」「安全運転指導」「勤怠時間管理」などの付加機能が、運行管理の高度化や物流の効率化にどのように寄与するのか、現在流通している商品の機能も踏まえて分析する。

運送事業者へのアンケート調査なども踏まえ、デジタコ将来的な普及率や具体的な普及促進策を検討する。事業者の規模や車両のGVWなどに応じた目標や、デジタコ導入の助成事業の見直しなどが想定される。

国交省はまた、デジタコの性能向上を踏まえ、1月にデジタコの技術基準を改正。従前は必須だった1年分の車内記録を「クラウドがあれば不要」とするなどの見直しを図った。事業者の利便性を高める形で普及率を押し上げたい考えだ。

国交省の運送事業者を対象とした調査によると、4㌧以上の車両のデジタコ装着率(車両数ベース)は71・7%だった。導入済みの事業者は「運転者への安全指導」や「労務管理」などで利点があると回答した。一方で、デジタコ未導入の事業者は「アナログ式で十分に管理できる」「投資する余力がない」「義務化されていない」などと答えた。

 

〈用語解説〉運行記録計(タコグラフ) 車両の速度と時間、距離の「法定3要素」を記録する車載装置。日本では1964年1月からバスやトラック、タクシーの一部などに装着が義務付けられた。国や運送事業者はこの記録をもとに運行管理や監査、指導などを行う。従来は「チャート紙」と呼ばれる円形の用紙に速度計と連動して情報を記録する装置が主流だったが、国土交通省は99年にデジタル式タコグラフ(デジタコ)を認可。データをパソコンなどで分析・加工できるため、多くのデジタコメーカーがエコドライブ(省エネ運転)や安全運転の支援機能を備える。

近年は事故に備えて前方画像を記録したり、自車位置などを含めリアルタイムで情報を運行管理者に送るなどの多機能化が進んでいる。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)3月2日号より