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自動車業界トピックス

出張整備事業者が国に規制緩和を要望

ブレーキパッド交換など特定整備を屋外でも

自動車の点検整備で新たな規制緩和要望が浮上している。ブレーキパッド交換などの「特定整備」を屋外などでも行えるよう、出張整備事業者などが協議会をつくって国への要望活動に乗り出した。制度を所管する国土交通省は、安全確保や環境への配慮などから慎重な姿勢だ。議論の成り行きが注目される。

「ユーザーの自宅などで整備を行う出張整備に関する規制緩和は、自動車の安全に直結する整備の品質や、整備士の安全を確保する観点から極めて慎重に検討することが必要であると認識している」。先月20日、斉藤鉄夫国土交通相は参院予算委員会で〝出張整備〟の是非についてこう語った。

出張整備のニーズは高まりつつあるが…

自動車の点検・整備を事業として行う場合は、国交省が定めた資格や基準を守る必要がある。このうち特定整備は、特に重要な原動機や動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、緩衝装置、連結装置、自動運行装置が対象で、脱着を伴わなくても、装置の作動に影響を及ぼす整備や改造を行うには、事業場ごとに設備や人員の要件を満たして認証を取得する(認証工場)必要がある。自動車整備士でも、この認証工場以外では特定整備を行うことができない。

この規制の緩和を求めているのは、出張自動車整備推進協会(出整協、佐川悠会長)だ。出張整備を手がけるSeibii(セイビー、佐川悠代表取締役CEO、東京都港区)や整備の業界団体、整備士の一種養成施設などが参加している。出整協は、機械工具や部品の小型化など「認証工場以外でも整備を安全にできるようになった」と説明し、作業者を国家資格の保有者に限ったり、安全確保策を踏まえた上で「場所規制の必要性と合理性を抜本的に見直すべき」と主張する。具体的には①ブレーキパッドの交換②オルタネーター(発電機)の交換③スターターモーターの交換―の3作業を屋外などでもできるよう求めている。

国交省は、車両の安全確保はもちろん、作業者の安全や近隣住民への配慮などを懸念しているようだ。例えば、足もとが不安定な場所で作業をすれば整備中の事故につながるし、毒性を持つ廃液や、不要になった部品を確実に回収・処理する枠組みもない。

出整協は、ブレーキパッド交換が屋外でできるようになれば「法定点検の実施率の向上にもつながる」と話す。法定点検は自動車ユーザーの義務だが罰則がないため、特に自家用乗用車の実施率は5割前後と言われるからだ。また、整備資格を持つ人が、空いた時間を使って出張整備を副業として手がけるなど、人手不足対策にもつながる。

出張整備自体のニーズは高まりつつある。工場に出向かなくても済む利便性に加え、オンライン販売で購入した部品の取り付けや、米テスラや韓国の現代自動車など、オンライン販売を主体とし、出張と工場での作業を組み合わせアフターサービスを行うメーカーが出てきたからだ。国交省の対応が注目される。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)11月8日号より