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自動車業界トピックス

半導体不足で中古車オークション相場が高騰、新車納期遅れで中古車に需要シフト

仕入れ負担増で悲鳴上げる販売店

中古車価格の相場が全国的に上昇している。中古車オークション(AA)各会場での平均落札価格は、コロナ禍で中古車人気が高まった前年を上回る水準で推移している。コロナ禍前の一昨年との比較では大幅に上昇しており、自動車販売店は仕入れ価格の上昇に伴う台当たり粗利の減少に頭を抱えている。背景にあるのが車載半導体不足による減産だ。新車の納期遅れで、下取り車の流通量が減少しているほか、すぐに入手できる中古車に需要がシフトしているもよう。高水準の中古車相場が当面続きそうだ。

AA最大手のユー・エス・エス(USS)グループの落札車平均単価は、4月が前年同月比39.0%上昇して78万5千円、5月が同33.9%アップの84万8千円、6月が同18.8%アップの85万9千円と、前年同月を上回るだけでなく、月を追うごとに金額が上昇している。USSグループ以外でもAAでの落札車の平均単価は前年と比べて10~30%上昇し、中古車相場は高騰している。

全国的にAA相場の高騰傾向が続く

ここ数年、車両の平均使用年数が長期化している影響から、高年式で、走行距離が少ない中古車の流通台数が減少し続けている。この影響から数少ない良質車に需要が集中し、中古車相場は上昇傾向にあった。そこに昨年からのコロナ禍で、公共交通機関の利用を避けて移動しようというニーズから、リーズナブルな中古車の需要が増加、小売り市場は堅調に推移して、中古車価格の相場が上昇した。

高止まりしていた中古車価格の相場が今春以降、さらに上昇トレンドに入ったのは半導体不足が原因だ。世界的な車載半導体不足の影響から自動車生産ラインの減産や一時停止などによって新車供給に遅れが生じている。車載半導体を製造するルネサスエレクトロニクスの工場で火災が発生すると、新車の納車がさらに遅れ、中古車流通台数が減少するとの思惑が広がり相場が高騰し始めた。

新車納期の長期化によって現在でも車種によっては納車まで数カ月~1年以上かかるモデルもある。納車遅れで下取り車が入庫しないことから中古車市場でのタマ不足が続く。

さらに現物を購入する中古車はすぐに納車される。このため「半導体不足をきっかけに、新車から中古車に目を向け始めたユーザーが増えたように感じる」(カーチス・山田貴宏社長)と、中古車に需要がシフトしている面もある。タマ不足と中古車人気に支えられ中古車相場の上昇に拍車がかかっている。

中古車輸出が堅調に推移していることも相場を押し上げる要因になっている。日本中古車輸出業協同組合(佐藤博理事長)によると中古車輸出台数は4月が同96.2%増の11万7440台、5月が同116.5%増の10万9166台と倍増している。前年のコロナ禍による輸出減少の反動もあるものの、海外市場で日本製中古車への引き合いが旺盛で、国内の中古車流通台数の減少につながっている。「アフリカ諸国では若年人口の増加傾向が続いている上、自動車を購入できる層の増え方から伸びしろは十分」(SBIアフリカ・北川智也社長)と、今後も中古車輸出台数は高水準で推移する見通し。

一方、中古車相場の高騰は中古車販売店やディーラーの収益力の低下を招きかねない。仕入れ価格の上昇で、小売り単価を高く設定せざるを得ないが、販売競争が厳しく、小売り価格への転嫁は容易ではない。「買い取りに力を入れると同時に、消費者に値段設定に対する理解と浸透を図りながら、販管費など経費削減でカバーする」(ネクステージ・広田靖治社長)と話す中古車事業者もある。

新車の納期長期化の解消に目途が立たない中、中古車格相場が落ち着くには時間を要する見通し。しかも旺盛な中古車小売り市場を見込んで、高騰している中古車を積極的に仕入れることは、相場反転によるリスクになりかねない面もある。自動車販売店は中古車事業で難しいかじ取りを迫られている。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)7月14日号より