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自動車業界トピックス

国内タイヤメーカー各社、技術系人材定期採用に工夫

入社後ミスマッチ抑え 若手の離職を防ぐ

国内タイヤメーカー各社が技術系人材の定期採用で工夫を凝らしている。ブリヂストンと住友ゴム工業は新たに職種別採用を導入した。入社後の配属によるミスマッチを最小限に抑え、若手人材の離職を防ぐ。従来の技術系総合職とも並行して行う。トーヨータイヤと横浜ゴムは従来から行っている技術系総合職の採用活動のみとする。それぞれメリットを最大限に生かしながら、将来を担う若手人材を確保する。

入社後3年以内の若手社員の離職防止策として職種別採用がタイヤメーカーでも導入されている

タイヤ業界は化学メーカーの印象が強く、応募する学生も化学系専攻が多くを占める。ただ、所属部署は化学系のイメージが強いタイヤ材料の研究開発や設計だけでなく、生産設備関連など機械系や電気系といった仕事もある。従来、技術総合職で採用した場合、入社後の研修などを経て新入社員の希望や適正を元に配属するが、必ずしも全員が希望の部署で働けるわけではない。「人気のある配属先もあり、ミスマッチが生じてしまう」(住友ゴム人材開発部の蛭田晋一郎課長)ことは各社が抱える課題となっている。

入社前に配属コースが決まっており、業務内容へのイメージを付けやすい職種別採用は若手社員の離職防止策にもなる。一度に大量採用できる総合職採用に比べ、「マッチングに時間がかかる」(同)など工数が増えて企業側の負担は大きくなるものの、「(総合職採用に加えて)職種別採用という選択肢が増えることで(ブリヂストンを)選んでもらえるきっかけになる」(ブリヂストン採用センターの小西将史部長)ことや学生自身がキャリアアップをイメージしやすいなどのメリットがある。職種別採用では、化学系以外の業務について機械系や電気系の人材にも知ってもらうきっかけとなるなど他分野の理系学生を取り込み育成していくことで企業成長につながる。

ブリヂストンは技術系総合職の募集枠に加え、研究開発職やデジタル職など4コースを、住友ゴムは8コースを設けている。

住友ゴムでは、昨年度の採用活動で技術系総合職コースの応募が最多となり、「学生自身、自分の特性が分からないため採用担当者に見極めてほしいという声は多い」(蛭田課長)。総合職コースから職種別コースなどコースを変更することも可能だ。選考を進める中でも学生の希望をくみ取ることで、内定後や入社後のミスマッチを防ぐ。

職種別採用について、横浜ゴムは「まだ検討段階」だ。配属でのミスマッチを防ぐためには職種別採用は必要とする一方で、「化学系人材でも製品の構造設計や生産技術で活躍している社員が多い。学生時代の4~6年間で推し量れない面がある」(採用担当者)ためだ。トーヨータイヤ人事部採用・人材開発グループの西田政宏グループリーダーも「必ずしも(職種別コースで)選んだ部署で長く働くとは限らない」と慎重な姿勢を見せる。同社では、職種別採用は導入していないものの内定後の面談で、ある程度の配属先は決めることでミスマッチを防ぐ。また、幹部社員育成のため、技術系でも管理系を経験するケースがあるという。

職種別採用、総合職採用のどちらにもメリットはあり、「(どちらが良いか)なかなか難しい課題」(横浜ゴムの採用担当者)だ。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)11月2日号より