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自動車業界トピックス

新車供給の制限緩和、納期の正常化に一歩

悩みの種はカー用品の供給不足 現場の緊張感は解けず

トヨタ自動車が受注残の解消に向けて3カ年で新車の供給拡大に動く中、他の系列では一足早く改善が進んでいる。人気車種では注文から納車まで1年前後かかるケースが目立ったが、通常の納期に近づきつつあるモデルも少なくない。ただ、納車前に取り付ける必要があるカーナビゲーションシステムなどの用品類では、いまだ供給不足となっている製品もある。これが、納期に影響する事例もあり、販売現場にとっては緊張感の解けない状態が続いている。

今はカーナビ不足の方が納期に響いている

日産自動車の系列ディーラーでは、新車の供給制限が緩和したことで、納期が2~3カ月に収まっている車種が多い。主力小型車の「ノート」は、8月末には納車できる状況だ。供給問題で一時、受注を停止していたSUV「エクストレイル」も約半年となっている。

また、日産はミニバン「セレナ」に、ハイブリッド車(HV)の「eパワー」搭載モデルを4月に追加発売した。すでに2万台超の受注残を抱えているが、8月ごろには納車が本格化する見通し。発売済みのガソリン車の3月の販売台数は5350台だった。一方、競合車のトヨタ「ノア/ヴォクシー」は約1万1千台。日産ではeパワー搭載車の割合を多めに見積もっているとみられ、HVの供給拡大を実現すればライバル超えも視野に入る。

スバルも供給制限のピークを越えた。2022年の夏ごろまでは半年待ちの車種もあったが、現在は主力モデルの多くが完成車工場から3カ月前後で出荷できる。新型「クロストレック」も受注後3~4カ月で納車できるため、販売現場では今後の販売活動のけん引役として期待をかける。

軽自動車を主力とするダイハツ工業やスズキのディーラーも、供給制限の緩和に手応えをつかんでいる。あるスズキディーラーの営業スタッフは「多くの車種で納期は2カ月ほど。売れ筋の『スペーシア』でも3カ月程度」としている。

一方、販売店で取り付けられるものも多いカーナビは、品不足が納車に影を落とし続けている。カーナビの本体が入手しにくくなっているだけでなく、車両後部を映すバックカメラなど一部の部品が届かないといった事態も生じている。「今は完成車ではなく、用品や部品の不足の方が納期に響いている」と複数のディーラーが口にする。

また、受注が集中するなどした特定のモデルで、納期の改善が進んでいないものもある。ホンダでは新型SUV「ZR―V」の一部仕様で、納期が1年を超えている。ミニバン「ステップワゴン」でも1年待ちの仕様が出ている。日産では軽の電気自動車「サクラ」で、ツートンカラー車の納期が来年2~3月になっているという。メーカーとのやり取りの中で供給制限の緩和が一直線に進んでいると感じているディーラーは少なく、供給遅延の完全回復まではもうしばらく時間がかかりそうだ。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)4月27日号より