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自動車業界トピックス

素材メーカー、温室効果ガス削減効果を可視化

LCAで定量評価し提案

素材メーカーが、自動車向け材料の温室効果ガス(GHG)削減効果の見える化を本格化している。日本製鉄は24日、自動車部材に鉄鋼を使用した際のGHG削減効果を、LCA(ライフサイクルアセスメント)で定量的に評価して自動車メーカーに提案する取り組みを開始したと発表した。帝人も炭素繊維に関してLCAでの二酸化炭素(CO)排出量の測定を定量化するシステムを構築。自動車メーカー各社が素材や部品製造時のCO排出量を、自動車に採用する選定基準にするとみられる中、素材メーカーのCO排出量削減効果を訴求する動きが本格化する。

自動車メーカーは素材のCO2削減効果を求めている(写真はイメージ)

日鉄は、自動車部品の設計段階におけるGHG排出量削減効果をLCAにより定量評価する取り組みを始めた。世界の鉄鋼企業が加盟する世界鉄鋼協会(ワールドスチール)の自動車分科会「ワールドオートスチール」が公開している自動車LCA計算モデル「UCSBモデル5」を活用し、自動車1台のライフサイクルでのGHG排出量削減効果を定量的に評価する。鉄鋼やアルミ合金、炭素繊維強化プラスチックなど素材ごとに異なる排出原単位への影響を踏まえ、対象部材だけを抽出して評価できる。

日鉄は、鋼材の性能を最大限に引き出す部品構造や加工技術を組み合わせて、車両の軽量化や安全性の向上を実現する次世代鋼製自動車コンセプト「Nセーフ―オートコンセプト(NSAC)」を展開している。今後、NSACとGHGの定量評価を組み合わせた提案活動を展開することで、カーボンニュートラルに寄与する脱炭素製品の採用拡大につなげていく。

自動車材料のCO削減効果をめぐっては、石油化学メーカーもLCA視点での製品提案を積極化している。帝人は、炭素繊維のLCAでのCO排出量を定量化する独自システムの構築に着手している。自動車や航空機、スポーツ用品などに使用する炭素繊維フィラメントの評価はすでに完了し、まず社内の製造工程から評価を始めている。今後は自動車業界などにも提供していくという。

原料の調達から生産工程でのCO排出量を換算するカーボンフットプリント(CFP)の算定も進んでいる。BASFは、社内デジタルソリューションの開発で、CFPデータを開示できる体制を整えた。自動車向けも含めたすべての製品のCFPを顧客に提供する。

国内では、三菱ケミカルホールディングスが2022年度上期中にも国内工場で生産するすべての製品で、CFPを算定できる体制を構築する方針。

自動車メーカーは、カーボンニュートラル実現に向けて、サプライヤーや素材メーカーに事業活動でのCO排出量削減を要請している。トヨタ自動車は、主要部品メーカーに対して21年のCO排出量を前年比3%減らすよう要求。

日産自動車は部品サプライヤーのCO排出量削減の取り組みを、部品や素材を採用する指標の一つとすることを検討する。

定量的なCO排出量削減効果を訴求することが今後の自動車の材料を大きく左右する可能性がある。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)1月25日号より