日刊自動車新聞社

企業の採用ご担当者の方は「モビナビの求人掲載」

メニュー

自動車業界トピックス

経産省、中小企業との価格交渉状況調査

自動車関連は転嫁率40%台で推移

経済産業省が公表した「発注側企業と中小企業との間の価格交渉・転嫁状況の調査結果」によると、自動車・自動車部品業界の価格転嫁率は44.6%にとどまった。原材料費、エネルギー費、労務費のいずれも上昇して先行きが不透明な中で、自動車サプライチェーン(供給網)を維持するため価格交渉機運は高まっているとみられる。

自動車業界では価格交渉機運が高まっている

2023年10~12月に下請けの中小企業など約30万社を対象に直近6カ月間における価格交渉・転嫁の実施状況についてアンケート調査し、約3万6千社から回答を得た。主要取引先として10社以上の中小企業から名前が挙がった発注側企業について、価格交渉・転嫁の状況を4段階で評価した。

自動車・自動車部品における価格交渉状況の業種別ランキングは6位で、前回調査(23年4~5月に実施)の20位から大きく上昇した。発注側企業から価格交渉を申し入れた割合は17.9%。下請け企業から発注側企業に交渉を申し入れた割合は49.4%だった。価格交渉が行われた全体の割合は67.3%を占めた。

価格転嫁状況の業種別ランキングは、前回調査から3ランク上昇して17位、コスト増に対する転嫁率は3.9㌽増の44.6%だった。各要素別の転嫁率は、原材料費が51.3%、エネルギー費が37.8%、労務費が28.8%で、いずれも前回調査と比べて1~4㌽上昇した。

価格交渉・転嫁ともに最高評価だったのは、ホンダ、スバル、ジェイテクトだった。トヨタ自動車、デンソー、トヨタ車体、トヨタ自動織機、日産自動車、スズキ、いすゞ自動車、日野自動車は、いずれも上から2番目だった。マツダ、三菱自動車、ヤマハ発動機は、価格交渉が最高評価で価格転嫁は上から2番目となった。一方で、三菱ふそうトラック・バス、オリックス自動車、ヤマト運輸はいずれも下から2番目の評価だった。

「下請Gメン」が中小企業に聴取したところ「自動車メーカー・部品メーカーに、業界全体として価格交渉・転嫁の機運が高まっている印象があり、二次下請けである自社としても発注側企業と価格交渉・転嫁を実現することができた」「発注企業を複数回訪問し、コスト上昇分の証拠書類を提示した上で価格交渉・転嫁を要望しているが『検討する』という回答が返ってくるばかりで、結局転嫁が進んでいない」などの声が寄せられた。

物流の「2024年問題」を抱えるトラック運送は価格転嫁率が最も低く、発注側企業の消極的な姿勢が依然として目立つ形となった。業種別の価格交渉ランキングは22位と前回調査の26位から上昇したが、価格転嫁ランキングは27位で、前回調査と変わらず最下位だった。価格転嫁率は2.4㌽増の24.2%。価格交渉が行われた企業のうち「交渉自体には応じたものの、転嫁にまったく応じなかった」企業の割合は28.9%で、27業種の中で最も高かった。コストに占める労務費の割合が高く、多重下請構造や、多くの個人事業主がいるなど、業界特有の課題が足かせとなっている。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)1月22日号より