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自動車業界トピックス

経産省、EV向け供給網を強靭化

レアメタルなど安定確保へ調達先の複数化促す

経済産業省は、電動車に関連する部素材のサプライチェーン(供給網)の強靭化に取り組む。パワー半導体や電池に使用するレアメタルは2020年代後半から需要の急増が見込まれる一方、コストの上昇や資源の問題から調達難に陥るリスクもはらむ。電動車に不可欠なこれらの部材を安定的に確保できるよう、完成車メーカーなどに対して調達先の複数化を促していく。加えて、供給を維持するための選択肢の一つとして在庫の積み増しも提示する。官民で一体となり、安定した調達体制の構築を目指す。

足元では、コロナ禍によるロックダウン(都市封鎖)や半導体不足による供給網の寸断が自動車産業に影を落としている。今後はさらに、電気自動車(EV)など電動車の需要が急増することで、電動車に必要不可欠なパワー半導体が不足する可能性もある。

電池材料であるコバルトやニッケルといったレアメタルの需給もひっ迫する見込みだ。SOKENの古野志健エグゼクティブフェローによると、30年にEVの世界市場が6千万台規模になると仮定した場合、リチウムは23年から、コバルトは25年から供給不足のフェーズに入り、「このままのペースでは30年には枯渇する可能性が高い」(古野氏)という。

また、素材メーカーなどは老朽化した工場の再投資のタイミングで国内生産を撤退し、コストが安い海外に生産拠点を移転するケースも増えてくると想定される。

この現状を踏まえ、経産省は「車載用半導体サプライチェーン検討ワーキンググループ」内でまとめた報告書で、完成車メーカーやティア1サプライヤーに対して、該当する部素材の調達先の複数化を進めるよう促した。あわせて、在庫の積み増しも検討するよう提示する。自動車業界では、必要な時に必要な量だけ調達する「ジャスト・イン・タイム」が基本だが、「半導体など保管コストが低く、リードタイムが長い部素材に関しては在庫の積み増しが有効」(経産省)とし提案していく。

同報告書は自動車産業だけでなく、半導体や素材メーカーにも周知し、供給網全体で認識の共通化を図るだ。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)7月4日号より