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自動車業界トピックス

自動車メーカー各社、どうする車両価格転嫁 

原材料高騰や輸送コスト上昇で自助努力の限界も

国内自動車メーカー各社が原材料価格の高騰や輸送コスト上昇分の車両価格への転嫁に頭を抱えている。インフレ圧力が高まっている米国市場ではイヤーモデル切り替えを機に車両価格を改定している一方で、日本市場では材料価格の高騰などのコストアップ分を小売り価格に反映する商慣習が根付いていないことから価格に手を付けられないでいる。原材料価格の高騰は自助努力だけでは吸収できないレベルに達しており、各社とも他社の動向も注視しながら対応を検討している。

値上げに敏感な国内市場では価格改定に慎重な姿勢を見せる(写真はイメージ)

国内市場ではフォルクスワーゲングループジャパンが10月に、原材料価格の上昇を理由に「ゴルフ」などの主力モデルのほとんどで値上げを実施するなど、輸入車各社は今秋、相次いで車両価格の値上げに踏み切った。これに対して国内自動車メーカーは国内市場向けの車両価格改定には慎重な姿勢を崩さない。

三菱自動車の池谷光司副社長は「原材料高騰による期初の台当たりの影響は3万円弱と見ていたが、年末にかけて鉄鋼や銅の価格が上がる可能性があり、台当たりの影響は5万円程度になりそう」と明かす。三菱自の2022年3月期業績見通しの台当たり営業利益は6万6千円。原材料価格の高騰の影響で、大幅に台当たり利益が低迷する見通しだ。

国内自動車メーカー各社は今期、原材料高騰によって数千億円の減益影響があるとみており、車両価格改定に対する消費者の抵抗が小さい欧米市場で車両価格を見直している。マツダは車種ごとに販売価格を段階的に見直すことを検討しており、「マイナーチェンジなどの機会をとらえて価格をアップする」(青山裕大専務執行役員)構えだ。スバルも「他ブランドの(値上げ)状況を見ながら適切な対応をとっていきたい」(江森朋晃常務執行役員)と、価格改定に前向き。

欧米と比べ車両価格の値上げに対するアレルギー反応が強い日本市場では各社とも慎重だ。トヨタ自動車の長田准執行役員は「日本はモデルチェンジでも価格を維持する流れがある」と指摘する。日本市場で車両価格値上げに先陣を切ると消費者離れを引き起こしかねないとの懸念がある。

国内市場で値上げに踏み切れない中、収益確保に向けて原価低減に注力するものの、エネルギーコストの上昇などもあって自助努力で吸収できる範囲を大きく超えているのも実情。「(原価低減が)限界にくれば(値上げは)あり得るかもしれない」(長田執行役員)と、各社とも価格改定のタイミングをうかがっている。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)11月22日号より