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自動車業界トピックス

2022年の企業倒産件数、3年ぶり増加

物価高が中小企業の経営直撃 帝国データバンク調べ

物価高が中小企業の経営悪化に拍車をかけている。帝国データバンク(後藤信夫社長、東京都港区)によると、2022年の企業倒産件数は3年ぶりに増加に転じた。運輸業は前年から2割以上増加した。エネルギー高などが響いたとみられる。自動車関連を含む製造業では、コロナ禍で業績が悪化した中小企業を支援する政府の「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けた企業の倒産が増えており、アフターコロナを見据え企業の地力が試されることになりそうだ。

原材料の高騰やエネルギー高の影響が深刻だ

昨年の国内企業の倒産件数は前年比6%増の6376件となった。19年以来、3年ぶりの増加となった。

自動車関連では運輸業が同22.9%増の327件、輸送用機械器具製造業が同84.6%増の24件と、ともに増加した。原材料の高騰やウクライナ危機の影響によるエネルギー高でコストが増加したことが要因とみられる。また、運輸業に関しては、「人材不足」を要因とした倒産が20件、「物価高」を要因とした倒産が64件あった。負担増の数値化が難しい労務費やエネルギー費は価格転嫁が難しく、中小企業庁が昨年9~11月に中小企業1万5千社を対象に実施した調査によると、発注企業への転嫁率はどちらも3割程度にとどまった。

コロナ禍で売り上げが減った企業の支援策であるゼロゼロ融資を受けた企業の倒産も目立った。倒産件数は384件で、前年の2.3倍に上昇した。ゼロゼロ融資は、元金の返済猶予の措置期間が1~2年に設定されていることが多く、今年以降に返済が本格化する企業が3割を占める。ただ、足元では物価高が続いており、中小企業を取り巻く状況は引き続き厳しい。帝国データバンクの担当者は「収益力が戻らず、返済原資の確保ができない企業の〝諦め〟による倒産増が今後も懸念される」と分析する。

倒産件数が年間8千件だったコロナ禍前と比べると、ゼロゼロ融資などの効果で件数自体は低水準で推移している。ただ、政府による補助施策が縮小し、物価高や人材不足も追い打ちをかける中では、中小・小規模(零細)企業を取り巻く経営環境はこれまで以上に厳しくなる可能性もある。収益力の改善や業態転換など、生き残りをかけた次の一手が求められる。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)1月18日号より