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SOMPOの櫻田会長辞任、会見で随所に悔しさにじませ 金融庁調査に一部反論も

SOMPOホールディングスの櫻田謙悟会長兼グループCEO

経済同友会の代表幹事を務め、著名な経済人だったSOMPOホールディングス(HD)の櫻田謙悟会長兼グループCEO(最高経営責任者)が退任することになった。ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)の自動車保険金の不正請求問題や、法人向け共同保険の価格調整(カルテル)問題で、金融庁から2カ月連続で行政処分(業務改善命令)を受け、事実上の引責辞任となった。26日の会見では随所で悔しさをにじませながらも金融庁の調査に疑問を示すシーンもあった。会見は3時間続いたが、不祥事がなぜ起きたのか、明確な輪郭は浮き上がってこなかった。

櫻田会長は2023年9月の会見で、「現時点では辞任する可能性はゼロ」と述べていた。不正については報道で知り、自分は知らなかったのでどうしようもなかった、という主張だ。

ただ、金融庁からは「知らなかったということ自体が(重要な情報がトップに上がらないということで)問題だ」と指摘された。不正を知ってからも能動的な行動を起こさなかった、とも指摘された。

これに対し、櫻田会長は「なんだかんだ言っても最高責任者。結果責任はある」「いろいろな方に相談したが、責任がないとは言えない」と繰り返し、立場上辞めざるを得ないというニュアンスの発言を繰り返した。記者から引責辞任か、と聞かれても「反論するつもりはない。皆さんの判断に任せる」とし、自らは認めなかった。

SOMPO HDではリスク管理などのため、最新の経営システムを構築している。今回、これが機能しなかった格好だが、櫻田会長は「結果としてそうなったが(やってきたことは)全体として間違ってはいない」とした。

また、金融庁の調査に首をかしげるシーンもあった。櫻田会長を含む歴代経営陣の下で、「上に物申しにくい文化が醸成されたと評価されたが、櫻田会長のどういうところが影響したのか」と記者から問われると、まず「指摘は厳粛に受け止めるが、何故なのかは『あなた(自分)が居たからだ』と言われているようだ」と答えた。その上で、「私自身は現場、世界で社員とミーティングや『グッドクラッシュ』(よいぶつかり合い)を繰り返してきた。チャットグループも20ぐらいもっている。上に物を言えない文化と言われて、にわかには(信じられず)、びっくりした」とした。

金融庁は「HDからのプレッシャーもあった」としたが、櫻田会長は「声を荒げて叱責したことはないし、無理な経営目標を押し付けるようなこともしていない」とも述べた。ただ、同庁では損害保険ジャパンの白川儀一社長が、ビッグモーターの不正を知っていながら修理車紹介の取引を22年7月に再開したことについて、「経営の数字のプレッシャーがあった」と、25日に解説している。

白川社長が就任したのは22年4月。直前までの22年3月期(西澤敬二社長時代)は過去最高益だったが、当時はコロナ禍で減少していた交通量が増え始め、関東で雹(ひょう)が降るなど、自然災害の影響が拡大した時期。22年4~6月期の利益が落ち込みそうなのが分かってきた頃でもあり、同庁では「最大顧客のビッグモーターを失い、売り上げを減らしたくないという思いがあったし、なにしろ社長に就任したばかりで数字を落としたくないという思いが大きかった」とみている。ただ、この点についても会見で、白川社長は「(変な)プレッシャーは直接的にはなかった」とした。

SOMPOグループの機能不全や不正についてもはっきりしない面も残った。ビッグモーターの自主調査書について、同社の幹部主導で都合のいいように改ざんされていた事実を部下が櫻田氏に隠した理由について、櫻田氏は「よく分からない」とした。改ざんの指示はビッグモーター幹部だが、実際に誰が書き換えたのかは同庁の調査でも判然としない。同社の幹部と、損保ジャパンからの出向者の話が食い違っているためだ。この改ざんした調査書についてヒアリング対象者から「了承」のサインを取り付けた人物が、どちら側なのかも不明なままだ。

この日の会見では、新体制も公表。櫻田会長が兼務していたグループCEOに、奥村幹夫SOMPO HD社長兼グループCOO(最高執行責任者、58)が4月1日付で、1月末で退任する白川儀一社長の後任に損保ジャパンの石川耕治副社長(55)が2月1日付でそれぞれ就任することも明らかにした。

(小山田 研慈)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)1月29日号より