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連載「JAMA 2023 大学キャンパス出張授業」(11)三菱ふそうトラック・バス 松永和夫会長/恩田実開発本部エンタイヤービークル開発統括部長

三菱ふそうトラック・バスの松永和夫会長と恩田実開発本部エンタイヤービークル開発統括部長は11月16日、山梨大学甲府キャンパス(山梨県甲府市)で講演した。テーマは「新たな時代に入る産業政策と自動車産業─三菱ふそうトラック・バスのCNへの挑戦」。松永会長は日本経済や経済産業政策の歴史などを説明した上で「日本は失われた30年から脱却する好機を迎えている」とし、政府と連動して投資や賃上げ、イノベーションの好循環を生み出していく考えを語った。

講演する松永会長

講演では、1990年代以降の日本経済の低迷を踏まえ、最近の世界情勢の変化や日本政府の政策転換を背景に企業の設備投資意欲が高まっていることと指摘。グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)といった潮流の中で「自動車産業は大きな構造変化を遂げようとしている」と見通した。

自動車の電動化については「ガソリンで走る車で強くても、電気で走る車をつくるときに強いかどうかは別だ。そのために必要な投資をしなければいけない」と語った。「ガソリンを軸にした今の経済システムを大がかりに変えていくことが重要だ」とも付け加えた。

三菱ふそうの技術戦略については、恩田実開発本部エンタイヤービークル開発統括部長が説明した。

恩田統括部長はまず、日本の二酸化炭素(CO)排出量のうち7%を商用車が排出していると説明。乗用車より保有台数は少ないが、1台当たりの走行距離が長いことなどからCOの排出量を減らす重要性を指摘した。

会場には多くの学生が来場した

そのためのアプローチとして、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、水素エンジン車の3種類について、それぞれの特徴や課題を挙げた。航続距離やインフラ、コストなどを理由に、EVは小型トラック、燃料電池車は大型トラック、水素エンジン車は建機などとの相性が良いとの見方を示し「こうした異なる技術がそれぞれ得意とする分野で使い分けられるようになる」と予想した。「ジャパンモビリティショー2023」に出展した電池交換式のEVトラックなども紹介し、「パートナーとも一緒になって何がベストなのかを模索していく」と語った。

参加者からは、松永会長が経済産業省(当時通商産業省)で国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3、97年)に携わった経験を踏まえ、交渉の状況やその際に得られた経験について質問が出た。

松永会長は、技術の積み上げでCO排出量の削減目標を定める日本と、理想とする削減目標を掲げる欧州の考え方の違いに触れ「日欧の議論が噛み合わず、大変難しい交渉だった」と振り返った。その上で、「国際交渉は日本の中だけを見ていてはいけない。幅広い相手と連携し、情報を収集して、したたかに動くことが重要だ」と応じた。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月21日号より