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よくわかる自動車業界

連載 自動車業界入門 ㉕車載電池

車載電池は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など電動車に欠かせない部品です。自動車の駆動用には充電可能な二次電池が使用されており、その代表はニッケル水素電池(NiH2)とリチウムイオン電池(LIB)です。1997年にHVが実用化されて以降、しばらくは安全性やコストが優位なNiH2が主流でした。現在は、同じ体積や重量で2、3倍ほどの電力を貯められるLIBが中心になりました。

車載用LIB

LIBの利用は90年代から携帯電話などモバイル機器で活発になりました。電力が長持ちするほか、電圧の降下が少なく機器の安定した動作につながるためです。その一方、電動車での本格活用は、LIBの電解液という構成部材が燃えやすく、衝突事故で大きな衝撃を受けても発火を抑える技術が必要だったため、10年ほど遅れました。

現在、車載用LIB市場ではCATLやBYD、LG化学など中国、韓国企業が大きなシェアを握ります。当初上位だった日本企業は、パナソニックが孤軍奮闘の状況です。正極や負極、電解液といった部材に関しては日本企業が強みを持つものの、近年は部材でも海外勢が伸びており、国内勢は押され気味です。

この状況を打破するため、2021年4月に電池・部材メーカーや自動車メーカーが新団体「電池サプライチェーン協議会(BASC)」を立ち上げました。日本の国際競争力を高めようというオールジャパンの取り組みで、現在60社超が参画しています。中国が主導するLIBの国際(ISO)規格への対応を最優先課題に、中国などに偏る原材料の安定調達やリサイクル問題の解決、生産時のカーボンニュートラルの実現、日本政府への提言などに取り組む計画です。

次世代電池として期待されるのが全固体電池です。電解液が固体となり安全性が高いほか、電力がより長持ちでパワーが上がるため、EVの航続距離の延長に役立つと期待されています。自動車メーカーも開発に乗り出しており、トヨタ自動車は20年代前半に実用化を目指しています。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)6月4日号より