CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の進展に伴い、自動車の安全・安心を守るメカニックの重要性はより増している。それに伴い、知識のアップデートやスキルアップがメカニックに求められている。一方、メカニック不足の解消は喫緊の課題だ。少子高齢化による労働人口の減少が避けられない現状ゆえに、今いるメカニックの存在感は一層高まっている。「自慢のメカニック特集」では、整備の現場を支え、活躍する各社のメカニックを紹介する。
進むデジタル化で現場の負担軽減も
自動車の高度化に合わせ、メカニックを取り巻く環境も変化している。2020年4月には、自動車特定整備制度がスタートし、従来の分解整備に加え、電子制御装置整備が資格要件となった。その対象には、将来的な自動運転車の普及を見据え、自動運転「レベル3」以上の自動運行装置も含まれてくる。特定整備を必要とする対象車両は保有台数の中では少ないものの、新型車を多く扱うディーラー各社は認証取得に必要な設備の導入や新しい技術に関するメカニックへの教育に積極的に取り組んでいる。
整備現場におけるデジタル化も進む。23年1月から車検証の発行および更新の際に、電子車検証が用いられることになった。車検証情報がICタグに格納されていることから専用アプリで確認できるようになったり、運輸支局への来訪が不要になったりするなど、ユーザーと整備事業者の双方にメリットがある。また、24年10月からOBD(車載式故障診断装置)検査の運用が始まる。スキャンツールを用いて自動車メーカーが提出する特定DTC(故障コード)と照合するという形で検査が行われるようになるので、警告ランプが点灯していないような故障も容易に把握できるようになる。
資格制度も刷新 多様な点で見直し
27年1月には、自動車の高度化に対応したメカニックを育成するために、新たな自動車整備士資格制度が施行される。一級と二級、電気装置や車体の整備士に電子制御装置に係る知識が求められるようになるなどさまざまな点が見直された。これを受け、各自動車整備専門学校では各教科目の時間配分やカリキュラムの再検討を行っている。
人材不足が顕在化する中、官民が連携しメカニック志望者を増やそうと動いている。高校生のみならず中学生や小学生を対象とした整備士体験イベントを各地で開催し、自動車の魅力や整備の面白さを訴求する。この地道な努力が実り、将来的なメカニック増加に繋がることが期待される。
労働環境の整備の継続的な推進必要
労働力を確保するためには、現在活躍する人材の離職を防ぐということも重要となる。季節を問わず快適に業務が行えるように冷暖房設備を完備するといった労働環境の整備は、継続的に推進していく必要がある。さらに、待遇改善にも取り組んでいかなければならない。給与面だけでなく、女性や外国籍人材、シルバー人材といった多様な人々に活躍してもらう環境づくりのほか、産休・育休制度の見直しといった働き方改革もますます重要となる。
メカニックの多くは、ユーザーの命を預かっているという使命を胸に、日々の業務に取り組んでいる。その役割を担い続けてもらうためには、会社の支援が必要不可欠だ。各社の継続的なサポートは、自動車業界全体の活性化にもつながるだろう。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)2月29日号より