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自動車業界トピックス

半導体不足で性能評価試験が活況

使用する流通在庫品に不適合混在で試験需要が拡大

深刻化する半導体不足を背景に、半導体の性能評価試験サービスの需要が拡大している。自動車メーカーやサプライヤーでは、不足している車載半導体の調達量を補うため、流通在庫品や汎用品の半導体を応用して使うケースが増えているが、流通在庫品には粗悪品が含まれることもあり、製品出荷後に半導体が原因で不具合が発生したケースもあるという。車載半導体の安定調達には時間を要する見通しで、当面、半導体性能評価試験市場の活況は続く見通し。

左の正規品には製造月「0609」を示すマークがあるが、右はレーザー加工で除去されている。製造月が古いことを隠して販売するためと見られている

半導体の流通在庫品の中には、保存状態が良くない製品や規格外の不良品、模倣品などが混在しているケースもある。現在、さまざまな産業で半導体が不足し、半導体を取り扱う商社などは世界中にある流通在庫をかき集めている状況だ。これらの中に不良品や偽物が大量に混ざって出荷されているという。しかもサプライヤーや自動車メーカーも調達した製品の半導体の性能などを検査で判別するのはほぼ不可能だ。

こうした状況を背景に、需要が高まっているのが半導体製品の性能を評価する試験サービスだ。沖エンジニアリング(OEG、橋本雅明社長、東京都練馬区)は、2021年6月に半導体や電子部品など流通在庫品向け「半導体の真贋(しんがん)判定・信頼性試験」サービスの提供を開始した。半導体不足よる代替調達の増加を受け、試験依頼が急増したためで「毎月50~60件の問い合わせがあり、実際の試験は待ってもらっている状況」(橋本社長)という。

同試験サービスでは、正規品と模倣品の外観比較や透過X線検査による真贋判定、電気的特性評価による機能試験、高温動作試験などの検査や試験を通じて信頼性を評価する。代替調達品が正規品なのか、機能に問題はないのか、寿命までの動作が保証できるのかなどを確認できる。橋本社長は「少なくとも今後1年間は(需要が増加した)この状況が続くだろう」と予想する。

トヨタ自動車では18日、2月の生産台数が計画比で約2割(約15万台)の減産になる見通しを発表した。主に「半導体の需給ひっ迫が要因」(熊倉和生調達本部長)で、21年度の生産台数は900万台を下回る見込み。半導体の調達先に出荷状況を確認しているが、今後も安定的に調達できる見通しは立っていない。

当面の対策として、代替できる汎用品の半導体もあることから、対応を本格化する。代替品は「社内評価は必要だが汎用的な半導体が使えることがある」(熊倉本部長)という。ソフトウエアの書き換えを含む設計変更で、汎用半導体を活用する動きは業界全体で広がっている。

自動車部品メーカーの中には中小・零細規模の企業も少なくない。人員も限られることから、代替半導体に合わせて迅速に設計変更したり、性能や品質を精緻に評価するのは難しい。流通在庫品を採用したあるカーナビゲーション関連部品メーカーでは製品出荷後、動作不良の不具合が発生したケースもあったという。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)1月24日号より