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自動車業界トピックス

ハイブリッド車が世界で人気、欧米中心に再評価の動き

日本メーカーの追い風に

日本では2009年のエコカー減税・補助金をきっかけにHVブームが起きた

世界でハイブリッド車(HV)が見直されている。調査会社のマークラインズによると、米国や中国、ドイツ、フランス、日本など主要14カ国の2023年のHV販売は約421万台と前年比で3割(29.6%)増え、増加率で電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)合計(28.3%)を上回った。充電不要の利便性と低燃費、手頃な価格と三拍子そろい、燃料高で中間所得層の支持を集めている。以前「HVは30年前後にピークアウトする」との見方が多勢だったが、EVの普及が遅れる分だけ人気を保つ可能性が出てきた。

EV市場はこれまで、複数保有の富裕層や新製品に飛びつく「アーリーアダプター」、フリート(大口)需要などがけん引し、手厚い補助金もあって拡大してきた。ただ、こうした需要が一巡し、ドイツなど一部で補助金を縮小の動きもあって、足元では成長率が鈍化している。

 HV再評価の動きが目立つのは欧米だ。欧州自動車工業会(ACEA)によると、23年のHV(マイルドHV含む)販売は339万7339台(前年比28.3%増)だった。EVも同程度(28.2%)の増加率を保ったが、増加率は22年の6割以上から急速に鈍化した。新車販売に占めるHV比率は25.8%とガソリン車(35.3%)に肉薄する。米国も22年はHV販売が減少したが、23年は増加に転じた。新興国でもHVが売れ始めている。

HV販売をけん引しているのは日本のトヨタ自動車だ。23年のHV世界販売は342万台(同31.4%増)で、新車販売に占めるHV比率は33.2%と6.0㌽改善した。宮崎洋一副社長は「25年には500万台も見通せそうだ」と話す。

トヨタ以外のメーカーも、あらためてHVの開発や量産投資に言及し始めた。40年に四輪全てをEVと燃料電池車(FCV)にするホンダ。最高財務責任者(CFO)の藤村英司執行役は「27年以降もHVは性能、収益性、軽量などを進化させていく」と語る。日産自動車のスティーブン・マーCFOもHV人気の再燃を踏まえ「eパワーの今後の展開について考えていく」と含みを持たせる。

富士経済は、HV(マイルドHV除く)の世界市場が35年頃までに1175万台規模に拡大すると予測する。EVシフトの原資を稼ぐ上でも、まずは売れ筋のHVでしっかり稼ぐことが重要になる。

一気に多様化し、群雄割拠状態のパワートレイン。将来はEVやFCVなどのゼロエミッション車(ZEV)に収束していくことは確かだが、多彩な用途や使用環境に応えるため、移行までの期間は以外と長いとも考えられる。HVの勢いがこのまま続けば「マルチパスウェイ(全方位)」で開発を続ける日本の自動車メーカーにとって追い風になりそうだ。

(水鳥 友哉)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)2月10日号より