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自動車業界トピックス

メーカー系整備学校で学生確保に明暗 系列内で差も

新たな試みで募集強化は不可欠 留学生数は回復の兆し

日産栃木自大はさまざまなイベントを通じて認知度を高める

自動車メーカー系の整備専門学校で、入学者数に差が出ている。日産栃木自動車大学校(中村光之校長、栃木県上三川町)やトヨタ東京自動車大学校(上田博之校長、東京都八王子市)などが堅調に学生を確保する一方、2023年度の入学者数が前年度の7割程度に落ち込んだ学校もあった。各系列の中で、明暗が分かれているケースもある。少子高齢化で、新入生の確保がますます難しくなっている。劣勢となっている学校では新たな試みを取り入れるなど、学生の募集活動を強化している。今後、外国人留学生の入学も見込めることから、巻き返しを急ぐ考えだ。

「過去10年ほどを振り返っても、ここまで少ない年はなかった」―。埼玉県と大阪府で「ホンダテクニカルカレッジ」を運営するホンダ学園(埼玉県ふじみ野市)の中嶋歩常務理事は顔を曇らせる。23年度の入学者数は約290人にとどまり、22年度から約3割も減少した。「特に前年が好調だったわけではない」ことから、危機感は大きい。日産・自動車大学校(本廣好枝学長)も入学者数を伸ばした系列校があったものの、23年度は全体で前年比約1割減だった。本廣学長は「1割も減ったことは近年なく、非常に厳しかった」と明かす。

入学者集めに苦労しているのは、メーカー系だけではない。メーカー系も含め47校が加盟している全国自動車大学校・整備専門学校協会(JAMCA、中川裕之会長)によると、23年度の入学者数(国家一級・二級課程)は4834人となり、過去10年間で最少となった。苦戦の背景の一つには、外国人留学生の減少がある。コロナ禍前も新入生の確保に頭を悩ませている整備学校は多かったが、東南アジアなどからの留学生を受け入れることで補ってきた。しかし、コロナ禍での入国制限などの影響で、受け入れが難しくなっている実情がある。

学生募集が堅調なトヨタ東京自大

この傾向は、メーカー系にも影を落としている。特に、ホンダテクニカルカレッジ関西(五月女浩校長、大阪府大阪狭山市)の「自動車整備留学生科」は、ベトナム出身者の間で人気が高く、多い年は約70人が入学していた。ところが、23年度は23人にとどまった。また、日産自大の本廣学長も「日本人学生は前年より少し増えたが、留学生の落ち込みをカバーするまではいかなかった」としている。

一方、日本人を中心に、着実に学生を確保している学校もある。特に好調なのが日産栃木自大だ。21年度以降、2年連続で入学者を増やしており、23年度は21年度の約1・3倍に相当する144人が入学した。国家一級、二級の養成課程のどちらも、右肩上がりとなっている。本廣学長は「高校との関係づくりや日産系列の販売会社との連携に成功している」ことが要因だ。トヨタ東京自大も23年度の入学者数は前年度比約4%増の約480人となるなど、毎年、安定した実績を残している。コロナ禍前から、留学生に頼る割合が小さかったことも、足元の好調さの要因の一つになっているようだ。 これ以外の整備学校でも24年春に向けて、明るい材料が出ている。コロナ禍で日本語学校への入学が遅れた留学生の大量入学が見込めるタイミングになっているためだ。実際、ホンダテクニカルカレッジ関西が23年度に実施したオープンキャンパスでは、留学生の参加者数が22年度の約3倍に増えたという。

日本の学生を増やす新たな取り組みも、実を結んでいく可能性がある。ホンダ学園は23年の学生募集活動から、ホンダ系列販社の担当者とともに、高校を訪問する活動に力を入れ始めた。特に効果を見込むのが地方在住の高校生へのアピールだ。コロナ禍で高まった受験生の地元志向は現在も続いているとみている。地元販社へのUターン就職にも実績があることを積極的にPRし、地方出身学生の増加につなげる考えだ。

少子高齢化で学生獲得競争は、今後さらに激しさを増すのは間違いない。入学者を増やしている日産栃木自大の中村校長でも「日産に整備の学校があることを知らない県民もいる」との危機感を持つ。このため、「さまざまな外部の集まりに顔を出し、認知度を高めることが重要」としており、地道な情報発信を続けていく必要もありそうだ。

(諸岡 俊彦)

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)10月4日号より