日刊自動車新聞社

企業の採用ご担当者の方は「モビナビの求人掲載」

メニュー

自動車業界トピックス

一級自動車整備士の誕生から20年、CASE時代に担い手として重み増す存在感

一級の試験が行われた当初から故障診断の能力が求められた

自動車整備士資格の最高峰である一級小型自動車整備士の試験が初めて行われてから20年になる。累計で2万172人(2022年3月末時点)が国土交通相から免許を受けた。国交省による整備士資格制度の見直しを控える中で、これまでの歩みと、一級資格に求められたものを振り返る。

第1回は、02年度に国による検定試験として実施された。03年度からは検定試験と並行して登録試験が行われ、09年度からは登録試験に一本化された。第1回は筆記試験を受験した9107人に対し、合格者は876人。その後の口述試験、実技試験を突破したのは330人。合格率は3.6%という狭き門だった。

一級資格が導入されたことで、整備学校は養成課程を相次いで立ち上げた。ただ、当時は試験対策の過去問などがなく、静岡自動車学園の平井一史理事長は「授業の内容などは模索しながらだった」と明かす。

登録試験を実施している日本自動車整備振興会連合会(日整連、竹林武一会長)では、一級が二級、三級の整備士試験と明確に違う点として、故障診断とコミュニケーション能力を挙げる。日整連では「高度な診断ができることに重点を置いた」とし、試験問題の作成では実務に即した知識を問うことを念頭に置いたという。その上で、口述試験は「正しい診断の前に正しい問診ができるか」(日整連)に焦点を絞った。問診で修理に必要な情報を得られなければ、正しい診断や修理につながらないからだ。

また、自動車大学校・整備専門学校が4年制の一級課程を設置したことで、一級の試験に向けて4年間勉強してきた学生の受験が増えた。日整連によると、11年度の一級の試験(筆記)における学生の割合は約38%、21年度は約52%と半数を超えた。整備士養成校が入学者の確保に苦労している中で、日整連では「学校側の努力がある」と分析している。

高等課程、専門課程の学生を学ぶ分野や期間でまとめた文部科学省の「修業年限別学科別生徒数」によると、一級の試験が始まった直後に当たる03年度の専門課程で自動車整備を学ぶ生徒数は2万5733人。このうち修業年限「2年~2年11カ月」の生徒数は2万4997人に対して同「4年以上」は119人だった。

しかし、07年度になると同「4年以上」の生徒は1757人と増え、22年度は5446人と15年間で約3倍になった。一方で自動車整備の専門課程で学ぶ生徒数は22年度には1万8093人に減少している。同「4年以上」の割合は30.1%と3割に上る。自動車整備を学ぶ学生が減少傾向にある中で、日産愛知自動車大学校の松川健一校長は「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の時代を担うのは一級自動車整備士。一級課程の学生を増やしていきたい」と話す。

国交省は22年5月、整備士資格制度などの見直しについて報告書を出した。その中で一級については大型、小型、二輪を統合した「一級自動車整備士(総合)」とする。これまで一級の試験が実施されていない大型と二輪の要素が加わるが、日整連では「電気・電子の知識は大型、二輪でも十分に応用が利く」とする。「(一級の)骨格の部分は続いていくだろう」とみている。

◆月刊「整備戦略」2023年5月号で特集「重みを増す国家1級~1級自動車整備士誕生から20年~」を掲載します。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)4月25日号より