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自動車業界トピックス

国交省が新たなモビリティに対応した道路空間とICT交通マネジメントの方向性示す

求められる地域に応じた拠点

国土交通省は、社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会で新たなモビリティに対応した道路空間や今後のICT交通マネジメントなどの施策の方向性を示した。新たなモビリティの動向を踏まえ、道路空間のあり方と、道路のパフォーマンス向上などに向けたICT交通マネジメントの枠組みなどを取り上げた。

人口減が顕著な地方部の人々や免許返納で運転できなくなった高齢者らは、移動困難への不安が大きい。一方で交通不便地域の解消などを図るためコミュニティーバスやデマンド交通も増え、コンパクトなまちづくりと多様なモビリティによる公共交通ネットワークの形成も進んでいる。カーボンニュートラル実現の上でも、エネルギー効率が高くダウンサイジングした小型モビリティ、電動低速のグリーンスローモビリティなどの普及は注目される。

脱炭素化の要請や自動運転などの技術革新を背景に、多様なニーズに対応するモビリティが道路空間に混在するようになった。新たなモビリティと道路空間の論点は、多様なモビリティの普及に対応し、各モビリティが分離または共存する走行空間の構造や機能はどうあるべきか、そうした空間をどのように確保すべきかにある。まちづくりや周辺道路との機能分担なども必要で、道路上の拠点に対するニーズ、機能、拠点の配置の検討も求められる。道路側もモビリティにどのようなデータを提供すべきかなどデータ基盤の検討が必要だ。

自動配送ロボットは、電動車いすが通行可能な段差や勾配を走行可能なものとして設計され、歩行空間に歩行者と共存する。バリアフリーに対応した歩行空間の整備が求められる。電動キックボードでは自転車と同じ通行空間を走行することも踏まえ、適切に分離した自転車通行空間の整備が考えられる。まちづくりや周辺道路との機能分担などと連動し、多様なモビリティが共存できる方策が必要だ。

新たなモビリティに対応した、さまざまな規模・タイプの交通結節拠点も求められる。地域に応じた拠点の機能やあり方などだ。また、電動キックボードなどのプローブデータは利用頻度の高い経路抽出などが可能で、民間保有データを活用した交通状況の分析・計画立案やその仕組みの検討も必要となる。

自動配送ロボットの走行には、走行前の経路選択のため、幅員や段差などのバリア情報や、走行中の自己位置推定のための3D点群データが必要だ。経路選択にバリア情報などを付与した「歩行空間ネットワークデータ」を構築し、3D点群データを生かした効率的なデータ整備や収集した3D点群データの共有なども求められる。

一方、今後のICT交通マネジメントについては、21年12月の基本政策部会で、フレームワークを提示。日本の道路交通パフォーマンスの現状と課題に焦点を当て、パフォーマンスモニタリングとデータ駆動型マネジメントによる道路のパフォーマンス向上施策の方向性を検討した。地域ごとに新たな広域道路交通計画を策定し、ICT交通マネジメント計画を位置付けた。

道路ネットワークのパフォーマンス向上には、交通円滑化・効率化による質的向上とネットワーク充実という視点が考えられる。道路ネットワークのポテンシャルを表す自由走行速度は全道路で時速61㌔㍍だが、渋滞などにより実勢速度は約6割に低下(平均時速36㌔㍍)。一般道路のロス率が41%に対し、高速道路のロス率は16%と相対的に低い。一般道路は、高速道路に比べ総走行台㌔が大きく、また、地方道のロス率が大きい。全区間で課題があるのではなく、特定区間・箇所に課題が偏在する。

一般道の走行は局所的な加減速の繰り返しで、区間全体の平均速度によるサービスレベル評価は限界がある。これまで、概ね5年に1回の道路交通センサスによる交通量などを基本に交通状況を分析したが、2010年代からプローブデータなどを活用した主要渋滞箇所の選定、対策検討やモニタリングを実施し、最近ではETC2.0の普及や人工知能(AI)などの技術進歩で取得可能データが質・量とも向上した。一方で、自治体管理道路においては、データを活用した観測体制が整っていない場合も多いなど課題がある。主要渋滞箇所では直轄・自治体箇所とも減少が進んでいるものの、自治体は直轄と比べ減少率は半分程度で、主要渋滞のうち対策未策定箇所は自治体が8割という。

交通量の偏りや渋滞頻発箇所など偏在する道路ネットワークの課題により、人流・物流のスムーズな移動が滞り、地域的・広域的な生産性低下や二酸化炭素(CO)排出などの課題を生じている。効果的に道路のパフォーマンスを向上することで、効率的に生産性・安全性・快適性の向上やCO削減に寄与する。1車線あたり交通容量は全国一律で設定されており、局所的な変動特性や偏在する課題に対応していない。求められるサービスレベルに応じて道路のパフォーマンスを向上するため、需要追随型で、ピーク時間交通量に対応した交通容量に関する基準類の改定、動的料金の導入検討といった取り組みなど、部分改良の機動的・面的実施など事業手法も検討する。

さらに、道路データプラットフォームを構築・活用し、サービスレベル分析アプリなどの提供やデータオープン化の推進による道路のサービスレベル分析では、自治体、学識者や企業などの道路利用者との地域の道路に求められるサービスレベルの検討体制構築、ソフト・ハード対策での地域づくりと連携した渋滞によるロス削減といった施策の方向性を示している。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)5月8日号より