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自動車業界トピックス

官民で水素に脚光、政府が「水素基本戦略」6年ぶりに改定

FCトラックや水素STの財政措置拡充など

官民で水素をめぐる技術開発や普及の動きが再び活発になってきた。政府は5月末にも「水素基本戦略」を6年ぶりに改定する。この中で燃料電池トラック(FCトラック)の普及拡大や、大規模水素ステーション(ST)整備に対する財政措置の拡充などを念頭に置く。先週末に札幌市で行われた先進7カ国(G7)による気候・エネルギー・環境大臣会合でも、燃料電池車(FCV)に関わる技術開発を進めていく方針が強調された。世界的な潮流であるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を追い風に、水素技術に関する投資が盛り上がりそうだ。

都市間を走る大型トラックはFCが向いているとされる(トヨタが米国で実証したFCトラクター)

政府が新たに策定する水素基本戦略は、国内における水素技術の社会実装を見据えたものだ。自動車の領域では、従来から普及に取り組んできた乗用FCVに加え、商用FCトラックに対する支援を重点化していく方針だ。特に重量物を積んで都市間などの長距離を輸送する大型商用車では、電気自動車では電池を大量に積むと積載効率が犠牲になるジレンマを抱える。FCトラックなら積載量を減らさずに脱炭素化できる。

FCVの普及目標に関しては、17年に策定した現行の水素基本戦略と同じ「30年までに80万台」の大枠を維持する方針。ただ、車両総重量(GVW)8㌧以上の大型トラックの転換目標や、商用車の充填も行える大規模な水素STを含めたインフラ網については、新しい指標を示す考えだ。現在も国による水素ST向けの補助金はあるが、大量の水素を積むFCトラックなども充填できる水素STに関しては、税制措置などを含め、今よりも財政支援を拡充することを検討する。

G7環境大臣会合では、水素の利用やFCVに関連する「技術開発を評価する」という文言が成果文書に盛り込まれた。西村康稔経済産業相は、「カーボンニュートラルというゴールは共通しているが、そこに行きつくまでには、多様な道筋がある」とし、水素をその道筋の一つに挙げた。

日本勢では、トヨタ自動車やいすゞ自動車などが出資するコマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT、中嶋裕樹社長、東京都文京区)が小型FCトラックの量産を開始したほか、トヨタは今秋以降に「クラウン」のFCVモデルを発売する。モビリティ領域での水素やFCVの活用拡大に向け、官民一体となった動きが再び盛り上がりそうだ。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)4月21日号より