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自動車業界トピックス

関西ペイント、調色システムで車体整備工場の人手不足を支援

誰もが活躍できる職場へ

色見本帳による調色には経験や感性が必要になる

関西ペイントが塗料の調色システムで、車体整備工場の人手不足への対応を支援している。調色は車体へ多彩な色の採用で難易度が増しているほか、走行する環境による色合いの変化も影響してくる。色の補正には高い技能が求められるが、人手が足りずに教育体制や人材の定着に課題を持つ事業場も少なくない。同社はデジタル化で、調色の脱職人化と人材の即戦力化を掲げ、「誰もが」活躍できる職場づくりへの貢献に注力している。

調色工程は、主に①近似色の検索②調色③テスト塗装④色判定―に分かれる。色判定が不調に終わった場合は、再び②~④の工程を繰り返すことになる。色見本帳を使用した目視による作業では、作業者一人ひとりの経験や知識、感性、感覚など技能に依存する部分が多いほか、未経験者と熟練者で差も生まれてくる。調色工程は、「人によって実塗装までの時間にバラつきがあり、翌日に持ち越すこともある」(関西ペイント)という。

カラーセンサーによる測色

同社が販売するコンピューター調色システム「AI(アイ)カラーシステム」は、独自の「機械学習エンジン」とセンサーを組み合わせる。同エンジンは、センサーで実車から読み取った色の近似色をビッグデータから呼び出す「検索システム」と、実車に近い配合に補正する「調色システム」で構成する。たとえ未経験者でも、システムの流れに沿って工程を進めれば、熟練者に近い回数と時間で作業を完了させることを目指している。

事業場全体の調色作業の標準化は、一日の計画台数を見通しやすくなる。人手不足で供給力が限られている中で、作業の遅延は売り上げにマイナスの影響を及ぼす可能性がある。業界を目指す人材が多くはない中で、生産性を高めていくことは人材確保と同程度に重要性が高くなっている。

こうした中で、2月に行ったバージョンアップでは、機械学習システムの改良と新型カラーセンサーの展開を開始し、車体色の主流となるメタリックやパール塗色の調色時間の短縮を図った。検索システムには従来よりも目視に相関した検索式を採用したほか、調色システムはアルゴリズムを変更して3コートなど複膜層に対する調色精度を向上させている。旧バージョンに比べて2コート(2層)で34%、3コート(3層)で20%の時間削減の効果を確認したという。

新型カラーセンサーにはモノクロカメラを搭載する。このカメラが、メタリックに使用されている光沢感を出すアルミなどの素材の粗さを自動測定する。従来は粗さの選択に見本帳を提供しており、作業者の技能が求められる部分が残っていた。粗さ選択の自動化で、調色作業の標準化を前進させている。また、測色角度に15度と105度の角度を採用し、作業者が目視で作業する時に近い角度で測色できるようにしている。

同社はAIカラーシステムを、調色だけではなく、車体整備工場のデジタルトランスフォーメーション(DX)の入口に位置付けてもらいたいとする。また、車体整備業が直面するコンプライアンス(法令順守)や需要の低下、人材不足などの課題解決につながる手段として、広げていきたい考えだ。

(村上 貴規)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月1日号より