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自動車業界トピックス

電力需給ひっ迫、自動車生産への影響懸念

受注残解消に新たなリスク

電力需給のひっ迫による今夏の自動車生産への影響が懸念されている。電力需要を分散するため、従来から7月に4連休を設定しているスズキを除き、今のところ生産計画を見直す動きは表面化していない。ただ、サプライヤーではヨロズが7~9月まで月に2日以上の一斉休業日を設定すると発表した。政府は休止火力発電所の再稼働など電源の手当てを急ぐが、電力需給はなお綱渡りだ。コロナ禍で積み上がった受注残解消に新たなリスクが立ちはだかる。

 政府は、夏としては7年ぶりになる全国規模での節電を産業界や国民に要請。想定を上回る気温上昇で27日には東京電力管内で電力需給ひっ迫注意報を、北海道電力や東北電力の管内も電力需給ひっ迫準備情報を出した。

自動車メーカー各社は従来の節電や省エネ活動に加え、追加対策を打ち出す。三菱自動車は7月に本社ビル(東京都港区)の空調温度を平時より1度上げる。いすゞ自動車も横浜市西区の本社受付にあるデジタルサイネージなど不要不急な設備の電源を切る。日野自動車は、在宅勤務者に自宅での節電を要請した。

電力を大量消費する工場でも対策が進む。トヨタ自動車は27日夕、中部電力の求めに応じ、愛知県などの11工場で自家発電設備などによる追加の節電を実施した。鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)に出力7500㌔㍗級(1基)、1千㌔㍗級(2基)のコージェネレーション(熱電併給)設備を持つホンダも「要請に応じて設備を稼働させる」(広報部)という。

ただ、今のところは節電を理由に生産計画を見直すまでには至っていないようだ。節電と稼働の両立にはメーカー間やサプライチェーン(供給網)単位でのきめ細かい調整も要るが、日本自動車工業会や日本自動車部品工業会も「現時点では稼働にまで踏み込んだ対策を業界全体で実施する計画はない」(自工会広報部)という。自動車メーカーの中には「節電で稼働率を落とすと、納期の長期化でさらに顧客に迷惑をかけてしまう」との声もある。

自動車メーカー各社はこれまで、半導体不足や中国でのロックダウン(都市封鎖)による部品不足で思うように完成車を生産できなかった。中国でのロックダウンがようやく解除され、今夏は受注残の解消に向けて可能な限り増産したいところだ。政府は休止火力の再稼働などを急ぐが、想定を上回る猛暑や発電所の故障などで電力需給が一気にひっ迫する可能性もなお残る。今夏は半導体や部品供給に加え、こうした電力リスクをにらみながらの生産を余儀なくされそうだ。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月30日号より