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〈キーパーソンに聞く〉VW、トーマス・シェーファーVWブランドCEO 「誰もが買えるEVを開発」

独フォルクスワーゲン(VW)でVW乗用車ブランドのトーマス・シェーファー最高経営責任者(CEO)がこのほど、日刊自動車新聞などとのインタビューにオンラインで応じた。シェーファーCEOは、電気自動車(EV)専用車となる「ゴルフ9」の計画に変更がないとしつつ「急速に状況が変わるようなことがあれば再検討することがあるかもしれない」と語った。ただ「われわれは誰もが買えるEVを開発する使命を持っている」とも強調した。EVのサブブランドを見直す考えも明らかにした。

 ―EVシフトが世界的に減速し、HV(ハイブリッド車)を再評価する動きもある

「国によってかなりペースが異なるという印象を持っている。国によって法律も違うため、致し方ないことだが、もし、半年から8カ月前に、『ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)についてはどうですか』と聞かれたら『HV技術についてはそれほど急速に発展してないから、国によってサポートもしてないし、未来はないだろうね』と答えていたと思う。その時はEVや水素の技術の開発の方が早いと感じていた。しかし、中国ではPHVにシフトしており、米国でも新しいトレンドが出ている。日本はHVが盛んな国だ。VWも今度の『パサート』『ティグアン』『ゴルフ』は100㌔㍍のEV走行ができるPHVだ。ただ、最終的にカーボンフリーのモビリティを達成しようと考えるとEVか水素しかない。もしかしたら、他にも技術はあるかと思うが、VWがいるボリュームセグメントに限ってはEVしかないだろう。ただ、当面はEVや内燃機関車も含め、(さまざまなパワートレインが)ミックスした時代が続く」

 ―9代目のゴルフはEVのみになるが、HVや内燃機関車の可能性は

「ゴルフ9はEVのみとなる。プロポーション、パフォーマンスという意味でも本物のゴルフに仕上がる。今年、日本に〝8・5〟のゴルフを導入する。過去最高の一番良いできのゴルフだと言ってもいい。PHVはEVモードで100㌔㍍走る。インテリアも最高の品質のものを搭載した。この次のEVとなると、2020年代の終わりの方だが、今のところ『EVでやろう』と決まっている。ただ、柔軟に対応する用意はある。もし急速に状況が変わるようなことがあれば、再検討することがあるかもしれない。だが、今のところはSSP(スケーラブル・システム・プラットフォーム)で、数年後にはなるが、やるということは決まっている。ただ、MEB(モジュラー・エレクトリック・ドライブ・マトリクス)プラットフォームについても、引き続き改良を加えているので、20年代の終わりまでは、航続距離が延びたり、充電時間が短くなったり、ソフトウエアが改良されたりということはある。SSPが出てくるのはその後になる」

EVのネーミングも数字から名前に変えていく

 ―EVの普及ペースをどう見ているか

「グローバルでビジネスを展開している。欧州だけ事業を展開しているわけではない。欧州では一定程度まで普及できたかと思う。次のエントリーレベルのEVの需要が高まっている。EV化を進める一番簡単な方法は、最初に大きい車から始めることだ。EVはバッテリーが大きく、その分コストもかかるので、どうしても大きい車から最初ということになる。ただ、普及が進むと、エントリーモデルの需要が高まる。実際にフォルクスワーゲンは「ID.2オール」というモデルを2万5千 ユーロ (約410万円)の価格帯で出す予定でいる。これは本当に大きな一歩だと思う。25年末から26年になると思う。VWというブランド名である以上、誰もが買えるEVを開発する使命を持っている。エントリー車の開発を引き続き行っていく。このトレンドはその他の地域でも見られる。一定の台数を出そうと思ったら、レンジの下の方のモデルがどうしても必要になる。まだ結論は出ていないが、検討はしていく」

 ―電動車シフトの中でゴルフの位置づけは変わるか

「ゴルフは今後もブランドの中核であることは変わりない。実際に台数だけを見るとティグアンをはじめSUVの方が売れている。これは確かだ。特に北米や中国など、ヨーロッパ以外の地域でも生産していることもあり、台数はティグアンが一番だ。ただ、VWというブランドで、バリューを一番よく体現してるのはやっぱりゴルフで、重要性は今後も変わらない。確かに現在は過渡期だ。VWは、ゴルフやパサートなど、名前をつけてラインアップを構築してきたが、ID.シリーズは数字を使っている。しかし、これからは名前にしていく。今は名前と数字が併存しているが、20年代末ぐらいまでに整理していく」

 

〈プロフィル〉2012年フォルクスワーゲンAG入社。15年VWグループの南アフリカの会長兼マネージングディレクター、20年8月シュコダオート最高経営責任者(CEO)などを歴任。2022年4月VWブランド最高執行責任者(COO)、同年7月よりVW乗用車ブランドCEO。1970年生まれ。ドイツ・マールブルク出身。

(織部 泰)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月16日号より