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連載「採用戦線’24 自動車メーカー」(上)成長のカギ 求む!エンジニアの卵

世界から高い評価を受ける日本の自動車メーカーが今後も競争力を維持できるかどうかは「人財」がカギを握る。日刊自動車新聞社が四輪・二輪車メーカーに実施した採用アンケートをもとに、現状や課題などを紹介する。

自動車メーカーで理系人材の手当てが難航している。グローバルな技術革新やデジタル化を背景に理系人材の需要が増える一方で、理系学部への国内進学者数は10年前からほぼ横ばいだ。「30年に最大約79万人のデジタル人材が不足する」との政府推計もある。電動化や自動運転、SDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)化が進む中、技術系の人材を確保できるかどうかが技術や商品戦略をも左右する。

母数の少ない理系学生を確保しようと試行錯誤が続く(イメージ)

大学への進学者数は年々増加しており、23年度の進学者数は過去最高を記録した。ただ、主に自動車業界などに就職する工学部系の学生数は10年前から変わらない。文部科学省の「学校基本調査報告書」(2022年度)によると、同年度の工学系入学者数は12年度比1.1%増の9万728人、理学系は同1.4%増の1万9180人だった。

〝エンジニアの卵〟が思うように増えない一方、企業の需要は高まる。自動車業界では、脱炭素化やデジタル化の進展により、特に電気・電子系や情報系の求人が増えている。本紙アンケートでも「人材を強化している部門」について、最も回答が多かったのは「電気・電子系」で回答企業は5社。ソフトウエア人材などの「情報系」と答えたのは6社だった。三菱ふそうトラック・バスや、ここ数年、採用計画を下回っている日野自動車は業務を問わず採用人員を増やしている。

文系の学生に比べて母数の小さい理系の学生に対し、どれだけ企業の魅力を知ってもらうか。各社は「対面でのインターンシップの受け入れを拡大したり、学生の学ぶ分野に合わせた1日仕事や意見のコンテンツを複数用意」(スズキ)、「志望度を向上させるイベントやワークショップなどを開催」(ヤマハ発動機)、「部門独自のイベント設定」(日産自動車)など、さまざまな工夫を凝らす。

求める要件を満たした人材に企業がアプローチできる「スカウト型採用」はホンダやスバル、いすゞ自動車などが活用する。ただ、他企業でもスカウト型採用が広がっているため「オファーの価値が相対的に下がっているように感じる」(ホンダ)、「(利用者のうち)エンジニア採用では目的意識のある学生が多いが、売り手市場なので他企業との取り合いになっており、いかに(会社の)魅力を伝えていくか」(いすゞ)といった課題も浮上する。アプローチ手法のほか、学生の関心を引くコンテンツを用意できるかが、学生に選ばれる企業のポイントにもなりそうだ。

生産現場を支える人材の確保も課題だ。ダイハツ工業やいすゞ、UDトラックスが「生産関連部門を強化する」と回答した。工程設計や管理などを担う生産部門の人材は車づくりには欠かせない。ダイハツ工業は「生産技術(生技)を志望する学生が少なく、配属後のミスマッチのリスクがある」と明かす。開発や研究に比べ、仕事内容がイメージしづらいことなどが足かせとみられる。ダイハツは「生技の面白さを伝える職場見学イベントを多数開催する」と回答した。

日本の基幹産業である自動車産業を発展させていくためにも、人材の確保と育成は重要だ。価値観とともに、スタートアップやNPO(非営利組織)など、仕事先が多様化している中、自動車メーカーはともに働く〝仲間〟を増やそうと試行錯誤を続ける。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月17日号より