日本はもちろん世界の基幹産業として発展し続けてきた自動車業界は今、自動運転などに象徴される技術革新によって100年に1度の変革期の真っ只中にあるとされています。大きな変革の影響は自動車産業の構造や流通のあり方、ユーザー意識などにも及んでいます。こうした変革期にある自動車業界に今年度も多くの新入社員が仲間入りしました。日刊自動車新聞ではこれに合わせ、キーワードごとに自動車業界を分かりやすく解説する恒例企画「新人歓迎 自動車業界入門」をスタートします。新入社員はもちろん、多くの読者のご参考になれば幸いです。

自動車産業が誕生したのは今から100年以上前の明治時代にさかのぼります。原動機から動力を得て自由に走ることができる自動車が登場したことで、それまで人々の移動を支えてきた馬車はすべて自動車に置き換わりました。大量生産技術によって世界中で自動車が普及し、社会インフラに欠かせない存在となりました。そして今、技術革新によって自動化や電動化が実現し、自動車産業に改革をもたらそうとしています。まさに「100年に1度の変革期」を迎えているのです。

世界初の量産車「フォードT型」が1908年に登場して以降、100年以上をかけて自動車は世界各国に広く普及するようになりました。自動車は人々の生活に劇的な変化をもたらすと同時に、痛ましい交通事故や排出ガスによる大気汚染といった負の側面も抱えることになります。

ただ、こうした負の側面は技術の進歩によって解消されようとしています。人為的な操作ミスをなくして交通事故を根絶する自動運転や、動力源を走行中に排出ガスを出さないモーターに置き換える電動化の技術開発が進んでいます。

IT(情報技術)によって、自動車が外部とつながるようになってスマートフォンのように利便性が高まっています。他人と共有利用することで、所有の負担を軽減して賢く車を使う動きも出てきています。

最近では、自動車業界で起きている顕著な変化について、接続(Connected)、自動運転(Autonomous)、共有利用(Shared)、電動化(Electric)のそれぞれの頭文字をとって「CASE(ケース)」と表現されます。

CASEが自動車産業にもたらすインパクトはまだまだ計り知れません。少なくとも、CASEをきっかけにIT企業などの新規参入が目立つようになり、巨大な自動車産業で次代の主導権を握ろうと業界内外の協業と競争が激しくなっています。

※日刊自動車新聞2020年(令和2年)4月14日号より