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よくわかる自動車業界

自動車業界入門 ②国内生産

自動車の国内生産台数は、1990年にピークの1348万台に達した後、為替の影響を低減するための現地化や国内市場の縮小を背景に減少に転じたものの、最近20年間は1千万台前後で推移しています。2019年の日本国内の自動車生産台数は前年と同水準の968万4294台でした。

国内の新車販売台数が約500万台であるため、残りの約500万台は海外に輸出されているということになります。これは国別の輸出台数で上位3位に入る規模です。ちなみに日本から輸出する台数が最も多い仕向け地は、約190万台を輸出する北米で、約100万台を輸出する欧州がこれに続きます。

 グローバル化に伴って、自動車メーカーの海外の生産拠点はかなり充実してきたにもかかわらず、人件費が比較的高い日本でなぜこれだけ多くの車を造るのでしょうか。理由は主に2つあります。

1つは日本の工場が高い品質水準を確保しやすいことです。近年は、海外拠点の品質水準も高まっているものの、品質と生産性の両立は日本人が得意とする所だけに、トヨタ自動車の「レクサス」や日産自動車の「インフィニティ」といった高級ブランド車は特に日本から海外に輸出するモデルが少なくありません。日本の生産拠点は、新工場を立ち上げる際や新しい生産ラインを導入する時に指標となる「マザー工場」の役割も担います。

もう1つの理由が雇用の確保です。自動車を1台生産するためには、約3万点の部品を生産する部品メーカーや完成車、部品を国内外に輸送する物流事業者など多くの人々が関わります。自動車メーカーと部品メーカーの生産部門だけでも国内で約90万人が働いており、業界全体では日本全体の1割に当たる550万人分の雇用を生み出しています。それゆえ、自動車は日本の基幹産業といわれるのです。

ただし、国内の新車販売が縮小していけば、為替リスクが大きくなってしまいます。日本の技術や雇用を守るためには、国内の需要を維持していく必要があります。

※日刊自動車新聞2020年(令和2年)4月15日号より