最高出力などクルマの性能を示す指標は数多くありますが、この中でも「燃費」を気にするユーザーは少なくありません。少ない燃料で、より長い距離を走ることができれば、地球環境の保護につながります。また、何よりユーザー一人ひとりの財布に直結する性能であるため、関心が高いのです。政府も次代の燃費基準を指し示すことで、自動車メーカー各社に対し、より燃費性能の良いクルマの開発を促しています。

 世界的に燃費が注目されるようになったのは、1970年代の石油危機がきっかけです。省エネルギー化の機運が高まり、日本でも76年から運輸省(現国土交通省)が燃費性能の公表を始め、79年には通称「省エネ法」の制定によって燃費基準が設けられました。以来、燃費基準は幾度となく強化されてきました。自動車メーカー各社はこれを乗り越えることで、自らの技術レベル向上を実現し、世界のユーザーから信頼も集めてきました。

日本では長年、独自のルールに基づいた燃費試験を行ってきました。「JC08」モードなどが一例です。しかし、現在は日本を含む主要国が策定した国際的な試験方法に基づく「WLTC」モードでの測定が必要になっています。旧来の燃費測定方法よりも、より走行実態に近い燃費が測定でき、カタログ燃費と実勢値のかい離を防ぐことができます。

新たな燃費基準も策定しました。政府は2030年度の乗用車の燃費基準を25.4㌔㍍/㍑に設定しました。これは、16年度比で32.4%も改善しなければ達成できません。さらに特徴的なのは、新たな燃費規制の対象に、電気自動車やプラグインハイブリッド車といった次世代の環境対応車も加えることです。こうした電動車ではガソリンや電力の製造過程の環境負荷も考慮した「ウェル・トゥ・ホイール」の考え方を取り入れることで、内燃機関車と同等の評価を可能にします。